文化 〔連載コーナー〕歴史探訪クラブ 其の251

■伊良湖神社境内にある磯丸の碑
先日、春の磯丸例大祭(いそまるれいたいさい)に参加されたある方から、「地内にある糟谷磯丸旧里(かすやいそまるきゅうり)の碑の表面に糟谷磯丸旧里愛知縣とあるが、なぜ県が磯丸の碑を建てたのか?」と聞かれました。言われてみれば、確かに伊良湖村の一漁夫歌人であった磯丸の碑をなぜ県が建立したのか、不思議に思いました。
そこで現地に行って碑を確認すると、その碑の裏側に建立の経緯が漢文で刻まれていました。その内容を要約すると「磯丸は、わが伊良湖岬村の一人の漁師である。生まれながらに親孝行で、母の病の回復を神に祈ると、その思いが神様に通じたことがあった。はじめ文字の読み書きができなかったが、勉強して素晴らしい和歌を詠むようになり、その交遊は偉い人にまで及び、遂には天皇のお顔を拝することができた。嘉永元(1848)年5月に85歳で亡くなった。その自宅のあったところが陸軍(伊良湖射場)の用地となったため、この地に碑を建て、彼のことを後世に伝えることとした。大正5(1916)年3月伊良湖岬村」となります。
ここからは、碑建立に関する史料がないため、推測になりますが、恐らく大正4年11月に行われた大正天皇御即位の御大典(ごたいてん)記念として愛知県がお金を出して、当時村の偉人であった磯丸を顕彰するための碑を建立したと考えると、碑の表に「愛知縣」と書かれているのも納得できるのではないでしょうか。
(学芸員 天野敏規)

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