その他 (続)尾鷲の植物誌

■モチツツジ(ツツジ科)
春から初夏(しょか)にかけてはツツジの季節。野生のツツジは日本には62種自生し、そのうち尾鷲地域では10種ほどが生育しています。この10種の中で身近によく見られるのがモチツツジです。モチツツジは日本固有種で、山梨県・静岡県から岡山県までの本州と四国東部に分布しています。低山の明るいところに生え、花は4月~6月に咲きますが、日当たりの良いところでは冬でも花を見ることがあります。名前の由来は、花の柄(え)や萼(がく)、新芽(しんめ)や若芽(わかめ)などに腺毛(せんもう)が多く、触ると鳥もちのように粘つくことによっています。
このねばねばは、花や芽を食べに来た虫をゴキブリホイホイのように貼り付けてしまう防御装置となっています。花の付近には、ねばねばにくっついて動けなくなっている虫がよく見られます。食虫植物は虫を捕ってそこから栄養分を得ていますが、モチツツジは食虫植物ではありません。ねばねばに捕まって死んだ虫はモチツツジの栄養にはなりませんが、これらの虫を専門に食べる虫がモチツツジに潜んでいます。モチツツジカスミカメという名を持つカメムシの仲間で、ねばねばに足をとられずに走り回ることができ、死んだ虫を食べて栄養をとっています。植物と虫にはきってもきれない深い関係があるようです。