文化 ふるさと再発見 Re:discovery Omihachiman 第82回

■文化財の保存修理(6)
埋蔵文化財の整理作業~歴史を紐(ひも)解き後世に繋(つな)ぐ~

前回は埋蔵文化財の発掘調査をご紹介しましたが、今回はその後に行われる「整理作業」を紹介します。整理作業とは、発掘で得られた遺物や情報を整理し、最終的に「発掘調査報告書」としてまとめるための工程です。報告書が1冊完成するまでには、さまざまな地道な作業が積み重ねられています。
まずは「遺物の洗浄」です。発掘で出土した土器などを筆や刷毛で丁寧に洗い、土を取り除きます。ただし、中には水につけると崩れてしまうほど脆(もろ)いものや、表面に文字が描かれているものもあり、細心の注意が必要です。次に「注記」です。洗浄を終えた土器片に出土した遺跡や場所などの情報を墨などで直接書き込みます。文字は極力小さく、目立たない場所に記します。続いて「接合」です。バラバラの土器片を専用の接着剤でつなぎ合わせ、元の形を再現していきます。作業は立体パズルのようで、小片を少しずつつなげて大きな形になったときは大きな達成感があります。そして形が整った土器は「実測」を行います。3次元の土器を2次元の図面に写し取る作業で、断面図や文様、土器製作時の痕跡まで観察し記録します。その図面はさらに「トレース」され、コンピュータで清書し、報告書に掲載できる形に仕上げます。また土器だけでなく、発掘時に作成した遺構(柱痕や石垣などの不動産的痕跡)の平面図や断面図も同様に整えます。最後に形が判別できる土器を並べて「写真撮影」を行います。明るさや色味、画角調整などに配慮することが大事です。
こうして図や写真、表、本文をまとめることで、ようやく一冊の発掘調査報告書が完成します。さらに必要に応じて、土器の欠損部に石膏を入れる作業や、瓦や土器に「拓本」を施す作業、また木製品の樹種同定や保存処理、炭素年代測定などの科学分析も行われます。
このように整理作業は、発掘調査で得られた成果を確実に後世へ伝えるために欠かせないものです。普段はなかなか目にすることのない世界ですが、日々専門職員が地道で緻密な作業を積み重ねています。こうした努力によって私たちの歴史が少しずつ解き明かされ、未来へと受け継がれていくのです。ぜひ皆さんも埋蔵文化財の整理作業に関心を持っていただければ幸いです。

文(文化振興課・和田)