- 発行日 :
- 自治体名 : 滋賀県草津市
- 広報紙名 : 広報くさつ 令和7年7月号
■草津宿本陣を守り伝えた生の声
『草津本陣風土記(ふどき) 田中房(ふさ)聞書(ききが)き』は、大正13(1924)年に20歳で隣の守山市から田中七左衛門本陣(現:草津宿本陣)に嫁いだ田中房さんの話を、青木健作(けんさく)さんが聞書きした書物です。昭和60(1985)年に『草津本陣風土記田中房聞書き』が地平社から発行されていましたが、その後絶版となっていたため、令和6(2024)年に新版が刊行されました。
本書では、寛永12(1635)年ごろより、街道を往来する大名などが休泊する「本陣」の役割を約240年勤めてきた田中七左衛門本陣が、明治3(1870)年に本陣・脇本陣の名目が廃止され役目を終えてから、現代に至るまでの歴史や本陣当主の姿、当時の生活の様子が記されています。田中家は非常に信心深く、毎朝、仏壇や神棚、裏の竹やぶにあるお稲荷さん、そして御除ヶ門(およけもん)に祀られている妙見宮(みょうけんぐう)にお参りをしていたことが記されており、本書を読むと田中家がいかに本陣を第一に考えた生活をしてきたかが分かります。
また、本書では本陣の建物など維持する田中家の苦労が記されています。特に三章の「片隅の昭和史」では、昭和14(1939)年7月から翌年3月にかけて、国庫補助を受けて、本陣の大規模な修理工事が行われましたが「戦争中も大工さんや庭師さんなんかに年に一度くらい来ていただいて手入れをしてもらいました。」とあり、過酷な時期でも本陣の維持を続けてこられたことが分かります。戦後も、修理素材が乏しく人手不足など、維持管理するのは容易ではなかったことがうかがわれ「本陣」という由緒と歴史ある建物を守り伝えることの大変さが伝わってきます。
現在、旧版の『草津本陣風土記田中房聞書き』は、史跡草津宿本陣内にある楽座館で本陣の保存整備と活用に関連する資料として展示しています。また、新版は、7月5日(土)より江戸時代の面影を残る空間で読書ができる「本陣文庫」で、誰でも読むことができますので、ぜひ来てください。
問い合わせ先:草津宿街道交流館(草津三)
【電話】567-0030
【FAX】567-0031