- 発行日 :
- 自治体名 : 滋賀県甲賀市
- 広報紙名 : 広報こうか 2025年2月1日号
◆古代の人のおまじない 紫香楽宮跡(宮町遺跡)出土木製品
奈良時代中頃の一時期、みやこが置かれた紫香楽宮跡(宮町遺跡‐信楽町宮町)の発掘調査では土器や木簡とともに様々な木製品が出土しています。
下駄や容器などの生活用具や工具のほか、祭祀(さいし)(おまじない)に使われた木製品も多く出土しています。
そのひとつが人形代(ひとかたしろ)(写真上)です。短冊状の薄い板の上部を丸形もしくは三角形に整形し、頭形をつくります。頭の下部左右から切り込みを入れて頭部と体部の境目を作り出し、腰のあたりから斜めに切り込みを入れて手を表現します。足の表現方法はいくつかありますが、下端から上に向かって逆V字状に切欠いて表現します。顔面部分は墨書で目・鼻・口・ひげなどを表現します。
もうひとつは馬形代(うまかたしろ)(写真下)です。扁平な板材を削り出し、馬の側面形を作り出したもので、鞍(くら)の表現があるものもあります。脚部を作らないため、馬に見えないかもしれませんが、よく見ると口や耳の表現から馬であることがわかります。これらの木製人形代と馬形代のセットは、7世紀後半頃から見られ、疫病(えきびょう)をもたらす鬼神を祓(はら)う祭祀に用いられたと考えられています。奈良時代は天然痘(てんねんとう)という恐ろしい疫病が流行した時代で、災いをもたらす神を人形代にうつし、馬形代はその乗り物に見立てて使われました。奈良時代後半頃からは鬼神の依り代(よりしろ)としての使用方法から個人の病気平癒などを祈る身代わりとしての使用に変化したことが指摘されています。現代の流し雛にも通ずるおまじないがすでに奈良時代からあったことに悠久の歴史を感じます。
紫香楽宮調査事務所展示室では発掘調査で出土したものや調査成果を展示しています。ぜひご来館ください。
(平日8時30分~17時)
問合せ:歴史文化財課 埋蔵文化財係
【電話】69-2251【FAX】69-2293