- 発行日 :
- 自治体名 : 滋賀県竜王町
- 広報紙名 : 広報りゅうおう 令和7年10月号
■人としての尊厳
私が退職して間もない頃、知人に誘われて認知症の研修会に参加しました。当時、義母は80代半ば、まだまだ元気に畑仕事をしていましたが、いつか来るその日のためにと参加することにしたのです。
講師は現役の医師や看護師で、認知症とはどのような症状なのか、どのように関わっていけばよいのかなど、具体的に話をしてくださったのです。中でも特に印象に残っていることは、「どんな状況にあっても、人としての尊厳がある。」ということです。
それから数年経ったある日のこと、義母の様子がおかしいことに気がつきました。外出先から帰ってきた時、台所でうろうろしていた義母が慌てて何かをポケットに入れたのです。それは戸棚にしまっていた菓子でした。その後、少しずつ気になる行動が目につくようになり、家族で見守るようにしました。
そのうち衣服の着脱も一人では難しくなり、できるだけ本人の持てる力を活用しながらも日々大変さを感じるようになりました。ある時、着替えたばかりの下着を汚してしまい、思わず「今、替えたばかりやのに。」と口走ってしまいました。その時の義母の怯えたような表情、今でも目に焼きついています。研修の際、最後に言われた言葉である「人としての尊厳」。決して忘れてはならないことだと改めて思い返しています。
文:人権擁護推進員
