文化 写真でたどる ふるさと再発見 No.66

【戦争柄の団扇(うちわ)】
今回は小川原の筒井康夫さんからお持ちいただいた昭和初期の「団扇」三枚を紹介します。これは、筒井さんの曽祖父の與惣九郎さんがお得意さんに配られた宣伝用のもので、当時の世相を知ることができる「団扇」です。筒井さんの商売は、紫雲英種(げんげ)レンゲの種と蚊帳(かや)を主に竜王町等で行商販売されていたそうです。

この団扇には「兵隊さんよ ありがとう」の歌と子どもたちが元気に学校から帰ってくる姿が描かれています。田んぼにはヘルメットをかぶった案山子、空には戦闘機が描かれています。
「兵隊さんよ ありがとう」
(昭和14年(1939)発売)
「肩をならべて にいさんと けふも学校へ
いけるのも 兵隊さんの おかげです
お国のために お国のために
戦った兵隊さんの おかげです」

左の団扇には、「みくにの子ども」の歌がのせられ、戦争ごっこをする子どもたちの姿、富士山と太陽、海上には戦艦が描かれています。
「みくにの子ども」
「み空にかがやくお日さまを いつも笑って雲の上
すめらみくにの子供らは みんなほがらに
育ちませう 育ちませう」
※すめらみくに…天皇が統治する

この団扇には、中国戦線で戦っている兵隊さんの様子、その下にはお父さんを送り出した家族がラジオで日本軍の勝利に喜んでいる姿が描かれています。皇軍将士に感謝の歌「父よ あなたは 強かった」の一節も添えられています。
(昭和14年発売)
「父よ あなたは 強かった 兜(かぶと)も焦す 炎熱を」
団扇には書かれていませんが、これに続く歌詞は
「敵の屍(かばね)と共に寝て 泥水すすり草を噛(か)み
荒れた山河を幾千里 よくこそ撃って下さった」

これらの団扇の図柄からは戦争の悲惨さや深刻さは伝わってきませんが、宣伝広告からも国民意識が戦争へと扇動されていった時代を反映しています。貴重な歴史資料の提供ありがとうございました。
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