- 発行日 :
- 自治体名 : 京都府京丹後市
- 広報紙名 : 広報京丹後 2025年4月号(第253号)
▽職員から就職という道
ほむたんの職員が一般的な人材派遣と違うところは、「職員が求める暮らしや働き方を重視する」という点。事務局職員との面談を繰り返し、適性や興味、要望をしっかり聞いて仕事先とマッチングします。もちろん、事業者側の要望も聞きながら調整。合わなければ仕事先を変えるなどして、職員に寄り添い働き方を提案します。
廣瀬さんも、面談を経て最初の仕事場となったのが木下酒造でした。「お酒が好きというのがあって、初めての酒蔵の仕事は新鮮でした。緊張はありましたけど、人間関係で困ることはなかったかな。割と馴染めたと感じました」。
逆に、事業者側はどう感じていたのでしょうか。木下酒造の木下光(ひかる)取締役は「もちろん不安はありました。自分たちで面談するわけじゃないので、どんな人が来てくれるか分からない。でも、繁忙期に人手が欲しいのもありましたし、リスクを承知で受け入れる決断をしました」。さらに翌年、廣瀬さんが2回目に来た時には「数が多いうちの商品をもうしっかり理解していて、『即戦力』と感じました。この事業を引き受けて良かった点ですね」。木下取締役の太鼓判をもらい、廣瀬さん自身も手応えを感じたそうです。そして、組合を退職し、木下酒造への転職が決まりました。
▽暮らしに合わせた働き方
「お酒がホント好きなんです」と笑顔で話す廣瀬さん。「生きるためには働かなきゃいけないけど、どこでどんな風に暮らしたいか、そういうのを優先するのもありかなって思いました」。
もともと〝好きなまちで暮らしたい〝から始まった廣瀬さんの仕事探し。そのまちで見つけた〝好きなもの〝を仕事にするという形は、新しい働き方になりそうです。
■ライフスタイルに合わせた仕事探しを提案したい
京丹後地域づくり協同組合ほむたん TEAM HOME TANGO
▽それぞれのライフスタイルを大切にした環境
京丹後地域づくり協同組合「ほむたん」は、令和元年に始まった国の特定地域づくり事業協同組合制度を活用して生まれました。組合の代表理事を務める川渕一清(かわぶちかずきよ)さんは、20代で京丹後にUターンし、仕事の選択肢が少ないと感じたといいます。「自分がこのまちに住むと決めた時、たくさんの人が興味を持って移住してくるようなまちにできたら、僕自身が幸せだな、というのがスタートでした」。
川渕さんが重視するのは、ほむたん職員のライフスタイル。ほむたんでは、職員を正社員として雇用し、年間を通して地域のさまざまな仕事に従事してもらいます。その際、事業者訪問や面談、研修などの事前準備をしっかりと行い適性を判断。これは、職員の不安や事業者とのミスマッチが起きないようにするためです。「働ける環境の選択肢を増やしたいと考えていて、派遣じゃなく正社員としての雇用は安心材料になるだろうと。その中で、何をやりたいか決まってない人が選べるのが良いなと。労働時間や日数にも柔軟に対応して、それぞれのライフスタイルに合わせられる環境づくりを大切にしています」。
▽職員の年間スケジュール例
▽京丹後地域づくり協同組合(ほむたんの仕組み)
▽事務局は職員と事業者の橋渡し役
地域には、魅力ある仕事であっても人手不足に悩む事業者も多く、ほむたん事務局が組合への加入を提案します。中には、職員が事業者に採用され、転職することもあり「その仕事を好きになって、事業者さんからも『ぜひ』という形が理想です」と話すのは、ほむたんの監事を務める井上健吾(いのうえけんご)さん。職員の研修や事業者との調整を行っていると、職員と事業者の関係が上手くいかないこともあるそうで「価値観の違いとかは仕方ないです。職員、事業者さんそれぞれに思いがあって難しい部分。だからこそ、私が双方とコミュニケーションを取って橋渡ししたい。自分の価値観に合った仕事を見つけて欲しいと考えています」。