文化 ふじいでら歴史紀行 224

【アイセルシュラホールに大きな前方後円墳ができたよ! 3 古墳に人を葬った施設】
前方後円墳を上から見ると、円形と方形をくっつけた鍵穴のような形をしています。円形部分を後円部(こうえんぶ)と呼び、アイセルシュラホールのジオラマでは向かって右側にあたります。また方形部分は前方部(ぜんぽうぶ)と呼び、左側にあたります。
前方後円墳で人を葬った施設(埋葬施設)は、後円部の中央にあります。ジオラマのモデルとなった仲姫命陵(なかつひめのみことりょう)(仲津山(なかつやま))古墳は埋葬施設の調査がされていません。このため、明治末(1912)年の調査で内容の明らかになっている津堂城山古墳の埋葬施設を参考に、ジオラマの後円部に埋まっている様子を横から見れるようにしました。
ところで、墳丘は実物の40分の1サイズにしているのですが、埋葬施設をその縮尺にあわせると、かなり小さくなってしまうので、それより大きな縮尺にしました。また、埋まっている場所も後円部の中央ではなく断面側によせるといったように、見やすい工夫がされています。
では、ジオラマの埋葬施設をのぞいてみましょう。後円部の頂上から掘り下げられた穴の中に石製の棺が据えられています。これは長持形石棺(ながもちがたせっかん)と呼ばれ、合計6枚の石を組み合わせています。そして、蓋には長方形の文様が刻み込まれ、各辺には突起(とっき)を持っています。また、側石(がわいし)と底石(そこいし)にも突起があります。
穴の中に据えられた長持形石棺は、外側を高さの半分よりやや下まで埋められています。そして、埋まらずに残った部分を覆うように四周に割石(わりいし)を積んで壁にし、上方を数枚の細長い石(天井石(てんじょうせき))で蓋をしています。さらに天井石の上面に白っぽい粘土を貼り付けて密閉します。このようにして石棺を石で覆ったものを竪穴式石槨(たてあなしきせっかく)と呼びます。
ジオラマの埋葬施設を、もう少しよく見てみましょう。長持形石棺の外面は赤い色をしています。また、石棺を覆う竪穴式石槨の床面、壁面、そして天井石の内側も赤い色をしています。亡くなった人を埋葬する際には竪穴式石槨の内面全体が赤色顔料で赤く塗られていたことが分かっており、ジオラマでもその様子を表しているのです。
モリナガ・ヨウさんには、埋葬施設の作り方などを、壁面にイラストで分かりやすく描いていただいています。古墳に人を葬った施設は、埋まっているため直接見ることはできません。でも、ジオラマやイラストの埋葬施設をご覧いただくと、その重厚なつくりを実感いただけると思います。
(文化財保護課 新開 義夫)