子育て 人権の目 226

■「つなぐ」ことでどの家庭も幸せに
神和認定こども園 子ども・子育て支援担当
保育教諭 岩谷真由子

私は、「子育て支援」と「絵本」をキーワードに、子育て中の親子を応援してきました。その一つとして、現在三木市で行われている「親子の絆づくりプログラム」(以下、BPプログラム)について紹介します。
産後うつや子ども虐待など現代の子育ての困難さは、親たちの育児の経験や知識の不足からの精神的ストレスによるところが大きいと感じます。BPプログラムは、育児不安やストレスを軽減し、穏やかな心で赤ちゃんに関わることで「親子の絆」を深め、子どもの心に「心の安定根」を育むことをめざしています。「親子の絆づくりプログラム“赤ちゃんがきた!”(BP1)」は、生後2〜5カ月の初めての赤ちゃんがいる母子10組を対象に、毎週1回2時間、連続4回で構成され、グループワークを中心に、同じ月齢の赤ちゃんを持つ母親同士が日常の気がかりなどをおしゃべりしながら、親としてゆっくり学び合う場です。
このプログラムは、こども家庭庁の「親子関係形成支援事業」の条件を満たしています。参加者は、他の人の赤ちゃんへの関わり方を実際に見たり聞いたりすることで、自分の子育てに生かすことができます。同じ立場の母親に学びながら、自分の体験が他の人の役に立つことも実感します。参加した母親同士が前向きに支え合う関係を築きつながり合うことが、このプログラムの魅力です。
初めから一人前の親はいません。また、完璧な子育てはありませんし、完璧が良いわけでもありません。親たちが自分自身を大切にしながら、親としての役割を引き受けていく、その過程を支えるのは、子育て仲間とのつながりや親子が一緒に過ごす時間、そして、親たちが育ちあう時間を大切にする支援とそれを見守る温かい社会のまなざしです。
親は「赤ちゃんを泣かせてはいけない」と思いがちですが、赤ちゃんは泣くことで何かを伝えようとしています。今の子育て支援は「親に代わって育児をする」傾向がありますが、それでは親が親として育つ機会を奪ってしまいかねません。赤ちゃんが親に泣いて訴えているのに、支援者が抱いて泣き止ませていては、赤ちゃんが発する親への感情表現を妨げてしまいます。大切なのは「親を運転席に、支援者は助手席に」です。「なぜ泣いているのか」を考える親を支えることこ
そが本来の支援ではないでしょうか。
「子ども・子育て支援」は、給付金や無償化、一時預かり、育児相談など、保護者への「子育て支援」が目立ちますが、両輪であるもう一方の「子ども支援」は、具体的にどのような取組があるのでしょう。子どもの幸せにつなげるためには、言葉にできない子どもの気持ちを周りの大人が丁寧に汲み取り寄り添ってあげることが、子どもの人格を尊重した「子ども支援」であると考えます。
子どもが思春期を迎える頃、幸せな笑顔に包まれた家族の姿がそこにあることをめざして、これからも「子ども支援」と「子育て支援」に力を尽くしていきたいと思います。