- 発行日 :
- 自治体名 : 兵庫県朝来市
- 広報紙名 : 広報朝来 令和7年3月号
■「高札(こうさつ) ~火付札~」
高札、とはその名のとおり人目につきやすいよう高いところに掲げられた木札のことで、法令や禁止事項など広く周知したいことを書き付けたものです。古くは奈良時代から使用されていたといいますが、江戸時代に最も多く使用されました。道ばたや橋のたもと、渡船場など人通りの多い場所に設置され、そこは高札場と呼ばれました。高札場は、周囲に矢来(やらい)(竹や木を交差させて組んだ仮の柵)を建てたり、石垣を組んだり土盛りをするなどして、村役人・町役人が管理をしました。
今回は、朝来市内に残された高札のなかからひとつ、火付け盗賊(とうぞく)にまつわるものを詳しくみていきましょう。読みやすいように句点や送り仮名を付けて紹介します。
「一つ、火付け・盗賊・人殺し、或(ある)いは贋金(にせがね)札を作り候(そうろう)者など、見聞き次第早速其(そ)の最寄りの役所へ召し捕らえ差し出し、亦(また)は訴え出で申すべく候」
まず始めに、火付け(放火)や盗賊といった犯罪行為を目撃した場合は、すぐに捕まえて役所へ差しだすか、もしくは訴え出ること、と書かれています。
「吟味(ぎんみ)の上、相違(そうい)これ無く候(そうら)はば御褒美(ほうび)下さるべく候事」
取り調べてそれが事実であったら、褒美がもらえるようです。
「但(ただ)し召し捕り候節(せつ)、手疵(きず)を負い、又は即死の者へは厚く御救助下さるべく候」
ただし、捕まえようとしたときに怪我をしたり、または最悪死んでしまった場合は手厚く救助してくださる、とのことです。
「訴人(そにん)致し候者引き合いの為、役所へ召し出し候節は、職業向き迷惑相成(あいな)らざる様、相応(そうおう)御手当下さるべく候間(あいだ)、有体(ありてい)申し立て候」
役所へ訴え出た場合、取り調べのために役所へ呼び出されたときは仕事の迷惑にならないよう手当てをくださるので、ありのまま話すこと、とあります。
「若(も)し、隠し置き後日他より相顕(あきら)かにおいては曲事(きょくじ)たるべき事」
もし、こうした犯罪行為を知っていながら隠しておいて後日よそから判明するということは、曲事=けしからんことである、としています。
そして、最後に「右、仰(おお)せ出(い)だされ候趣(おもむき)、相心得(あいこころう)べき者なり」。
右に書かれていることをよく心得ておくこと、と締められています。末尾に「壬申(じんしん)四月 豊岡県」とあるので、明治5年4月に豊岡県から出されたものであることが分かります。
この高札については全国的に出されたものであり、とくに地域性のあるものではありませんが、高札は禁止事項や御触書(ふれがき)が掲示されることから、その当時の地域がどういう状況であったかを示す史料にもなります。
朝来市埋蔵文化財センターでは、3月1日(土)から3月30日(日)にかけて、「朝来の高札展〜村々へのショートメッセージ〜」と題した企画展を開催します。今回紹介したもののほかにも朝来市内に残された高札を複数展示しますので、ぜひお越しください。
※詳しくは本紙をご覧ください。
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