- 発行日 :
- 自治体名 : 兵庫県新温泉町
- 広報紙名 : 広報しんおんせん 令和7年5月号 vol.236
■ニシノオオタネツケバナ(バラ科)
数年前のことです。新緑の美しい頃、山麓の木陰に車を止めて一休みをしていた時、側溝沿いに見慣れない野草が咲いているのを見かけました。オオバタネツケバナかな、と思いましたが草丈は3倍ほどもあり、今ままで見たこともない雰囲気の野草でした。茎頂の白い小花は蕾の部分がほんのりと赤みを帯びています。花の群は2か所ほど見られ、高さは30~50cm、茎の下部はわずかに地を這うように寝て、節から発根しているものもあります。花茎は斜上するものもありますが、ほとんどが直立しています。茎頂の花は十字の白い4弁花で直径5~7mmで雄しべは6個、うち4個が長くなっています。葉は奇数羽状複葉で全体の長さは6~8cm、頂葉はかなり大きく長さ1.5~2cmの腎形や心形をしており、側小葉は1~8対で頂葉の半分くらい小さく、いずれも鋸歯縁となっています。
数本採集して県の標本庫へ問い合わせると、オオケタネツケバナの変種で西日本を中心に分布するニシノオオタネツケバナ(西大種付花)であるとのお返事でした。オオケタネツケバナとは名前の通り全体に毛があり、東日本に分布する高さ80cmほどの大型のタネツケバナだということでした。その後も標本を送り続けたところ、オオケタネツケバナと同定されたものも出現して混乱しました。野生に育つ植物たちも環境や気候の影響を受けながら自生地を変えていくのでしょう。これからもまた、どのような変種が出現するのか楽しみな植物の世界です。
文・写真 中澤博子さん