- 発行日 :
- 自治体名 : 兵庫県新温泉町
- 広報紙名 : 広報しんおんせん 令和7年10月号 vol.241
■『社会におけるこどもの人権』をテーマに「第3回人権講座」を開催
文化会館では、同和問題をはじめ、あらゆる差別や人権侵害をなくし、お互いの人権を大切にするまちづくりを目指して、年5回の人権講座を実施しています。8月27日(水)に第3回目の人権講座を開催しました。
▽DVD「あなたのいる庭」を視聴
今回の学習テーマは『社会におけるこどもの人権』です。啓発ビデオ「あなたのいる庭」(令和6年度兵庫県人権啓発ビデオ)を視聴し、その後、町人権啓発指導員の日浦智さん(浜坂公民館長)の講話で学習を深めました。
社会には、虐待や貧困、死別など様々な理由で保護者と暮らせず、児童養護施設など社会的養護のもとで暮らしているこどもたち、そして社会的養護下から自立したが、家族からのサポートを得られずに生きる人たち(ケアリーバー)がいます。社会的養護の現状や実態を知る人は少なく、世間からの無理解と偏見にさらされ、居場所を見つけ出せず、進学や就職など生きる上で様々な困難に直面している現状があります。
次代の社会を担うこどもたちが自分らしく幸せに成長でき暮らせるように、社会全体で支えていかなければなりません。「こどもの人権」について改めて考え、誰もが一人の人間として尊重される社会の実現を目指すことを目的として、このドラマは作成されています。
▽日浦智さん(人権啓発指導員)の講話
今回の学習テーマは「社会におけるこどもの人権」です。
今見ていただいたDVDには児童養護施設が取り上げられていました。
児童養護施設とは、保護者のいない児童や、保護者がいても様々な理由で養育が適切でない子供たちを入所させ養育する施設です。そこでは、こどもの生活を保障し、自立を支援することを目的としています。
こどもたちは、決して施設で隔離されているのではなく、地域に住み、地域の学校園に通いながら生活しています。一時的に避難しているだけで、こどもたちには何の問題もなく、家庭に住むこどもたちと同じで、地域に住み、地域で育てられるこどもたちです。
児童養護施設は全国に610か所あり、そこで23,008人が暮らしています(令和4年3月現在)。
入所対象者は「保護者のいない児童」「虐待されている児童」「その他、環境上養護を要する児童」です。具体的理由としては、「父母の行方不明(18.5%)」「虐待(16%)」「父母の離婚(13%)」「父母の入院(11.3%)」「父母の就労(11.1%)」です。
DVDの中で「ケアリーバー」という言葉が出てきましたが、ケアリーバーとは、社会的養護(児童養護施設や里親家庭など)の下で育ち、原則として18歳になったことでその施設を離れ、社会の中で自立していく若者のことを言います。社会の中で自立しようとする姿は他の若者と同じです。ただ、違っているのは、安心、安全な居場所から離れることを余儀なくされたり、困り感や課題に対して頼れる身近な家族や人が乏しいということです。
そして、DVDの中には、気になる言葉がたくさんありました。
『親と暮らせない子たちね。ああいう子たちってなんか…ねえ』
『ねえ、大丈夫ですか?あんな子たちを出入りさせて…』
『同情したくなる気持ちはわかるけど、あんまりかかわらない方が…』
『児童養護施設っていうと暗いとか、かわいそうとか…私たちのこと知らないから…』
『「あんたなんか、産まなきゃ良かった」ってあの人は私の気持ちとか幸せとかどうでもいいんだよ。だったら産むな』
『こどもには、「この人なら大丈夫だ」って思える安心できる大人が必要なんです』
また、ケアリーバーたちが直面している問題は、
『進学したくても経済的な理由であきらめたり、寮付きの仕事を探すのが精いっぱいで…』
『進学したんです。奨学金で何とかなるだろうと思って。でも結局、経済的に…中退です』
『就職してからも、私が施設の出身者だとわかると「あいつは育ちが悪いから」って…』などです。
誰もがみんな、幸せになりたいと思っています。しかし、自分だけの力では「辛さ」を抱えて動けない人がいるのも社会の現実です。ほんの少し敏感になって気持ちを汲み取りお互いを尊重し合う『一言』が大切ではないでしょうか。
今日のDVDのテーマは「あなたのいる庭」。その意味は「安心できる居場所」ではないでしょうか。人権意識を高めるには何事も『我が事として考え、正しく知る』ことです。
そして、誰もが『自分は大切にされている』『自分はここにいていい存在なんだ』と思えるような居場所を持つことが大切なことだと思います。
問合せ:新温泉町文化会館
【電話】82-3328