くらし 日本薬草文化始まりの地 宇陀市

私たちは植物なしには生きていけません。
植物には抗酸化作用や抗菌・抗ウイルス作用、薬理作用、栄養素の補給など様々な働きがあり、その香りや味わいとともに、心と身体のケアに役立てることができます。こうしたエッセンスを秘めた植物は古来“薬草"と呼ばれ、日本各地でその土地の人々や環境と結びつき、大切に受け継がれてきました。
(出典…雑誌『セラピスト』2025年8月号(株式会社BABジャパン))

■歴史背景
宇陀市は古代から薬草文化が息づく地として知られ、日本書紀には西暦611年に推古天皇が日本で初めての薬猟りを宇陀市で行ったという記述があります。宇陀市の大宇陀には何十軒もの薬問屋が軒を連ね、そこから全国へ薬が広まっていくルートがあったとも言われています。
そういったルーツから大手製薬メーカーの創業者には宇陀市の出身者が多く、全国へ薬を届けた「始まりの地」であると言えます。また、日本最古の民間薬草園「森野旧薬園」も宇陀市にあり、今でも四季折々の薬草を鑑賞できます。
※諸説あります

■大和当帰について
大和当帰はセリ科の多年草。国内では栽培しやすい品種として古くから北海道を中心に栽培される北海当帰が有名でしたが、17世紀中頃から大和地方に野生していたものを大和当帰と呼ぶようになり、現在の市内で栽培される当帰につながっています。

■「大和当帰」の魅力
◇味わい
味わいは香り同様、セリ科植物によく似ており、セロリやパクチーに似た風味があります。大和当帰の葉の天ぷらやお茶、また葉を細かくした粉末を塩と混ぜた当帰塩としての食べ方があります。

◇成分
ビタミンKやミネラルなど様々な栄養成分が豊富に含まれています。特にビタミンEを豊富に含み、血管や肌・細胞などの老化防止や血行促進などの効果があります。生薬になる根は、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」などの漢方に使用され、貧血病や生理不順、婦人の更年期障害などに薬効があるとされています。

◇香り
セリ科の多年草であり、同じセリ科のセロリのような香りが特徴的です。少量であっても当帰特有の香りを感じられ、サラダなどにアクセントを加えたい場合などに良い働きをします。

■生産から商品化までの流れ
採取した種を育苗

栽培

収穫

乾燥

加工

商品化(入浴剤のほか、お茶や調味料にも)

消費者の方のもとへ!

宇陀市で生産された大和当帰葉は、食品や入浴剤に加工され、市内外へ販売されます
※詳しくは本紙またはPDF版をご覧ください。

■薬草に関わる方々の声
・生産に関わる萬世 晴康(ばんせ はるやす)さん
大和当帰栽培を始めたきっかけは「休耕地・耕作放棄地」の活用のためです。元々専業農家ではなかったものの、定年退職後に大和当帰栽培を開始しました。
栽培当初は、生育不良により植えた苗が全滅してしまいましたが、2年目以降、原因を追究しながら少しずつ栽培面積を増やし、今では三人の仲間とともに、大和当帰をはじめ数品目の薬草栽培にもチャレンジしています。
名実ともに「薬草のまち宇陀市」になることを願って薬草栽培に取り組んでいます。

・生産に関わる山本 喜次(やまもと よしつぐ)さん
宇陀の歴史ある薬草を広めるため、10年以上前に大和当帰栽培を開始しました。
最初は順調にいかなかったものの、試行錯誤を重ね、今では数千本の大和当帰を育てています。
大和当帰の栽培は難しく、天候不順や病虫害による苦労が多いものの、大きな葉が多く採れ、立派な根が収穫できた時は喜びもひとしおです。

・加工に関わる山口 武(やまぐち たけし)さん
宇陀市の薬草協議会の立ち上げメンバーとして、長らく大和当帰を栽培してきました。現在は、「健康なまちづくりに貢献したい」という思いから薬草、健康野菜の栽培、加工事業に取り組んでいます。
販路開拓には苦労が絶えませんでしたが、大きな目標を打ち立て、目標達成に向け、多くの改善に着手しました。今ではお客さんから需要が高まり、当帰という存在が認知されてきたと感じ、諦めず継続してきてよかったと思います。

・生産に関わる久保田 勝典(くぼた まさのり)さん
自分が手をかけ、育てた分の成果がしっかりと返ってくることに栽培の魅力を感じます。栽培を始めた当初は薬草について知らないことも多くありましたが、薬草の良さを知り、自然にあるものが薬になるということを実感し、自身の健康や失われつつある地域の風習などにも関心を持つようになりました。
現在は、薬草の良さを多くの方に知ってもらえるようにフィールドワークなどのツアーも行っています。

問合せ:商工産業課
【電話】82・5874【IP電話】88・9075