- 発行日 :
- 自治体名 : 奈良県三宅町
- 広報紙名 : 広報みやけ 令和7年7月号
「お腹空いたなぁ、昼はラーメンにしようか、でもさっぱり冷やし中華もいいな~」と食べ物のことを考えるのはいつも楽しいものです。人間にとって食事は栄養を得るだけでなく、美味しいものを味わう喜びや家族との団らんに花を添える役割など、豊かな生活を送る上で欠かすことのできない存在です。
しかし、心や身体の病気によって思うように食事ができなくなると、生活の質は大きく低下してしまいます。思うように食事が食べられない、楽しめないことに伴う苦痛を「食関連苦悩」といいます。その食関連苦悩をもたらす代表的な病気のひとつが「がん」です。
がんに伴う食関連苦悩は古くから大きな問題として取り扱われてきましたが、近年ますます盛んに研究が行われています。その結果、がんによる食欲低下を改善する新薬の登場など、明るい兆しがあります。しかし、まだがんに伴う多くの食関連苦悩が克服されないままです。食事を食べられないことは周囲から正しく理解されない場合があります。「食べられないのは気持ちの問題でしょう」と食べることを無理強いされたりすると、患者は二重の苦しみを体験することになります。そのようなことにならないよう、患者を見守るご家族やケアラーの皆様は正しい知識を身につける必要があります。
まずは医師に食べられなくなっている理由や回復の見込みなどを尋ね、正しい情報を得ましょう。次に、患者の身体の状態に合わせた食生活へシフトしてあげることが大切です。周囲の理解で患者の生活の質は大きく変わります。最後に、食関連苦悩は患者だけでなくご家族、ケアラーの皆様の悩みも含まれます。「どうして食べてくれないのか、わからなくてつらい」「食べられないのは私の努力が足りないせい?」そんなふうに思って悩んでいませんか?悩んだときはひとりで抱え込まず、ぜひ医師に相談してください。
緩和ケア科 主任部長 中村契先生