くらし 大泉教育長インタビュー「未来の学校プロジェクト」とは(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 奈良県三宅町
- 広報紙名 : 広報みやけ 令和7年8月号
現在、三宅小学校が令和11年に築60年を迎えるにあたり、小学校建替えに向けての検討が進められています。昨年開催された教育フォーラムでも、「もし三宅町に新たな学校を作るなら」というテーマでワークショップが開催されるなど、建替後の学校のあり方について議論が進んでいます。今号の巻頭特集では、「未来の学校プロジェクト」と題された一連の動きについて、三宅町教育委員会・大泉志保教育長にインタビュー。単なる学校建替えに留まらない、未来の三宅の子どもたちへ残したい新たな学校の在り方について、お聞きしました。
インタビュアー:三宅町地域おこし協力隊 山川達也
―「未来の学校のプロジェクト」はそもそもどういうものでしょうか?
まず一番大事なことは、三宅小学校は老朽化しています。なので三宅小学校は近い将来、確実に建替えの必要があるということです。私はこの建替えというのを、100年に一度の大事業だと捉えています。その100年に一度の大事業にあたって、従来の学校のように単なる学校の施設、従来型の施設を作ってしまうと、子どもたちにとって一番古い形の学校になってしまうのではないかを危惧しています。現在、教育の潮流はものすごい勢いで変化を求められています。それは人間の生き方そのものに変化が求められているともいえる。学校教育も変わらないといけないと言われている中で、どっちの方向にどう変わっていくかを、僕らは先読みして学校を作らないといけない。もう100年に1回のことなので、学校の建替えに乗じて、これからの教育の中身を考える機会にしないといけないと思っているんです。だから慎重にみんなと一緒に未来を見据えて取り組みたいというのが、この「未来の学校プロジェクト」なんです。
未来の学校を考えるといっても、教育に携わっていらっしゃらない住民の皆さんには、なかなかそこが見えにくいっていうこともある。イチから住民の皆さんと話していく中で、一緒に勉強していければと思っています。例えば最先端の学校教育がどういうものなのかを映画を見ながら一緒に考えたりとか、そういうことがすごく必要になってくる。みんなで一緒に勉強していく中で多分、目から鱗みたいな「気づき」っていっぱい出てくると思うんですよ。今まで学校は「こういうもの」だと思ってたけどそうじゃないんだ、とか。例えば社会に出たときに学歴を問われるようなことも今はかなり少なくなってきているじゃないですか。どこの大学を出ているとか、偏差値がどのぐらいあるということよりも、どれだけその人に人間的な魅力があるかが問われてきて、それが“生きる力”になってきている。学校教育もそういう方向に転換していかないと、子どもたちにとって不幸だと思うんですよね。だから基本的にはこの校舎の建替えをチャンスにしたいっていうのが一番の思いですね。
―学校の建替えと、これからの教育を考えることはどういう風にリンクすると考えられていますか。
例えば学校の中で、教室に壁がなくなると、異学年交流をしやすい形になるとか、教室じゃなくても校内のいろんな場所で、勉強できることが実は大事なんじゃないか、とか。そういったことですよね。(学校という)器の中には、幼稚園と小学校が一緒になってるべきじゃないか、小学校と中学校の接続はどうしたらいいのか、建替えをそういったいろんな仕組みを考えるチャンスにしないといけない。もちろん中学校は川西町との組合で成り立っているので、これは当然、川西町とも一緒に考えていかないといけない問題です。いろんなことをみんなで考えていく機会にしないといけないと思っているんですね。
―具体的なプロジェクトの中身や進め方について、ご説明いただけますか。
一つは、様々な学校を見たり、さっき言ったような映画を見たりすることです。海外視察という話もありますが、日本と全く社会制度が違う国の教育を見て、何の参考になるんだと仰る方もいるかもしれない。ただ逆に日本の教育制度が本当にこのまま続いていくかわからないとなった時に、だからこそ別の国の学校の在り方を見る必要があると思うんです。例えばフィンランドは、幸福度がすごく高い、子どもたちがすごく幸せに生きていると言われてきた。でもその中でも(教育制度に)反対する意見、もう破綻しているといった意見が出てきているんです。そういう意見も出てくるところこそ、逆に見るべきだと思うんですね。本当にそうなのか、なぜそういうふうに言われているのかを知ることに意味があると思うんです。
もう一つ、実はフィンランドという言葉を出したのは、いま三宅町にとって、今年開催した教育フォーラムにフィンランド人の先生に来ていただくなど、交流があるからなんですね。この交流をチャンスにして、学校視察が一番しやすい北欧の国である。そういった意味では、例えば現場の先生や高校生・大学生、それから議員や住民の皆さんなどを募って、見に行くような事が可能であれば、そんなことができたらいいなぁと思っています。もちろん見た学校のことをそのまま三宅で行おうというのは思っていない。どこを見たにしても、良いところ・悪いところは絶対あると思う。いろんなところを見て、知見を増やして、みんなで意見を言いやすくするために、最先端の学校をできるだけたくさん多くの人で見るべきだと考えています。
これは視察に関してです。あとは、有識者を集めること。そう言うといわゆる学識経験者とか、有識者の中だけでどんな学校にしていくか話し合われるんじゃないかと心配を持たれがちですが、そういう意味ではないです。三宅町は小さな町なので私たち教育委員会もすごく少ない人数で運営している。住民の皆さんの意見を聴く会を開くというのが非常に困難な部分があります。だから「有識者を集める」というのは、その有識者の方に決めてもらうのではなく、住民の皆さんを集める工夫をしたり、住民の皆さんと一緒にものを考えるための土台を作る人を集めたいと思っています。例えば広報をする、意見を募集する、当日に会のファシリテーターをしてもらう。そしてその知識を蓄積していってもらう。そういった意味での有識者が必要だと思っています。方向性を一緒につけていくっていう人かな。これは僕一人では到底できないことなので、僕もいろんな人の力を借りたいっていうのが大きなことですね。
―視察の仕方と人員の配置が「未来の学校プロジェクト」の根幹事業だというのがわかりました。今後はどういった時系列で進めていきたいと考えられていますか?
校舎の耐久年数から言うと、全く新校舎にするのだったら、子どもの安全面を考えると、令和10年中から校舎の建替えに入るのがいいのではと思っています。そこから逆算して考えると、そんな1年2年でできることではないので、このタイミングからやっていかないといけないという時期に入ってきていると思います。