- 発行日 :
- 自治体名 : 奈良県三宅町
- 広報紙名 : 広報みやけ 令和7年8月号
■「個別最適な学び」と「協働的な学び」を実現できる学校へ
―どういった住民の皆さんにプロジェクトを一緒に考えてもらいたいというのはありますか。
やっぱり子どもの未来を考えてくれている人ですね。子どもの未来に目を向けている人。今ある社会情勢にとらわれるのではなくて、“未来”を意識してくれる方。子どもが将来をどんなふうに生きていくのか、子どもたちにどういうふうになってほしいと願っているのか、子どもの未来を一緒に考える人たちと議論していく必要があると思います。そうじゃない学校なんて従来のものを新しくしたらいいという発想だけだと、子どもたちがやっぱり可哀想だと思うんです。未来を考えられる人たちと議論していきたいですね。
―どういった学校がいいのかという議論は今後深まっていくと思うのですが、現時点で教育長の思い描く「未来の学校」像とはどういう学校だと思われますか。
現在でも実は文部科学省は(その形を)うたっているんです。「個別最適な学び」と「協働的な学び」という言葉を押し出しているんですが、工業生産のように子どもたちを画一化して、同じ期間、同じ箱の中で同じものを教えてという形は、もちろん必要な部分もあるかもしれないけど、そうではない部分がものすごく増えてくると思うんです。いわゆる「個別最適化」。本当にその子が伸ばしたいという能力を、伸ばせるような教育が求められる。一方で人と繋がる力やみんなで協力して、膝突き合わせて議論をして何かを解決していく力はすごく大事だと思うんです。それが「協働的な学び」だと思うんですけど、結局その意味を追求していくことがすごく大事だなと思っています。そういうのが一つの(目指すべき)学校の姿かなと思います。
今の中学生は平均寿命が110歳、120歳になってくると言われています。老後も含めて何十年も生きていかないといけなくなった時に、「生きる力」というのがすごく大事になってきます。点数に表れる教科の勉強ももちろんそれは土台として大事だけど、その上に積み重ねられるのが子どもたちの「探究心」だと思うんです。学校に行ったらすべてを“学校化”してしまう。ルールを教えたり規律を教えたりも、もちろん大事なことだけど、同時にそれで子どもたちの熱中する心や探究心を失わせているというのが現実です。その事に気づいてる学校は、今たくさん増えていて、例えばカリキュラムを今でも大きく変えているところが出てきたり、午前中に5教科の授業は全て終わらせて、昼からは全部探究の授業にしているっていう学校も増えてきている。
一言で言うと「非認知能力」だと思うんですけど、その「非認知能力」を大事にしたいというのは、町全体でやっていくことなのかなと思っています。決して根底から、今の学校を全部否定してというつもりはない。そこは誤解のないようにしたい。5教科の勉強をないがしろにして1日遊んでいればいいという学校を作れとは絶対思っていない。基礎・基本の学びを大切にするっていうのは、当然生きるために必要で、それを失ったら公教育じゃなくなると思うので、それはしっかりした上で、そういう非認知能力のことを大切にする学校、忘れないまちになってほしいなと思います。私が赴任した時に、まず教育大綱を作りました。その中で「子どもたちは未来からの留学生」という理念をあげたんですけど、この意味を一緒に考えていくことが、簡単に言うと、「未来の学校プロジェクト」だと思っています。
―そういった学校を実現するための具体的な学校の機能としては、どういったものが考えられますか?
探っていく必要がある。もし異学年交流が重要となってきたら、異学年交流ができる機能を持った教室の形がいいですよね。他にも先生が前にいないと駄目なのかという問題もある。学校の先生が前で講義型になってることが本当にいいのかどうか。真ん中に立ってもいいし、円になってもいい。「個別最適な学び」や「協働的な学び」をしやすい教室構造はどういうものなのかは考えられますよね。ほかにも小学校はほとんど学級担任制になっていますが、教科担任制でもいいんじゃないか。例えば教科担任制になれば、子どもたちが教室を教科ごとに移動する形がいいのかもしれない。「国語の時間は国語室で」、のように。現在でもそんな学校も実際にあります。いろんな形が考えられると思います。
―先ほどお聞きした異学年交流とは例えばどういったものでしょうか?
今でも探求の学習ではそうしてるところが多いんですけど、1年生から3年生まで、4年生から6年生までが一緒になって縦割りで勉強するという形ですね。今後子どもたちの数がすごく減ってきたら、三宅小学校でも学年毎にクラスを複数分けられない場合も出てくる。そうなった時に出てくるのは、人間関係が同じクラスでずっと上がっていくということになる。でも例えば1〜3年生を一つにしてしまって、一つの集団としてすれば3クラス、A組、B組、C組と縦割りの3クラスを作ることができると思うんです。「個別最適な学び」と「協働的な学び」が成立してくると、縦割りでも一緒に勉強ができるんですよね。自分たちで進んで勉強する力がついて、ICT(※情報通信技術)を活用すればあり得ることだと思うんですよね。だから本当にいっぱい考えられることがあって、校舎構造もそういうふうにして深めて考えていく必要があるかなと思います。
■「子どもたちは未来からの留学生」
―聞いてるだけで、学校がワクワクする場所になるように感じます。広報「みやけ」をご覧になっている住民の皆さんにメッセージはありますか。
目の前の小学生や中学生は、私たちよりももっともっと先を生きていくっていうことを意識して、子どもたちと関わってもらいたいなというふうに思いますね。子どもたちに何というか私たちの地球を託すというか…そういう願いで子どもたちを見てほしいなと思いますよね。当然みんな、生活も苦しくて、自分たちの周りが生きることだけで精一杯っていうことはある。それでもその後生きていく子どもたちのことを想ってもらうと、例えばどうやって学校に入っていったらいいか、学校とどう関わっていけばいいか、おのずから見えてくると思います。何よりも興味を持ってもらいたいですね。子どもたちに興味を持ってもらいたいし、将来・未来に興味を持ってもらいたいです。僕らがこれからやっていかないといけないのは、コース料理を子どもたちに提供するのではなく、キャンプを経験させることだと思います。それは言葉通りのことではなくて、何でもかんでも揃えて失敗させないように子どもたちを導くのではなくて、大いに失敗させる。その中でまたチャレンジさせる、そういう大人でありたいと思うし、町全体がそうなったらいいなと思いますよね。
※教育フォーラムは本紙裏表紙に掲載しています。