- 発行日 :
- 自治体名 : 奈良県上北山村
- 広報紙名 : 広報かみきたやま 令和7年3月号(No.684)
上北山村国民健康保険診療所
医師 辻本 凌悦
■オーロラはなぜ白い?
こんにちは。診療所所長の辻本です。
村の寒さを舐めてました。今回はそんな寒さを超える極寒の地、北欧ノルウェーでオーロラクルーズに以前参加した話をさせてもらいます。
ノルウェーはスカンジナビア半島の左側にある縦長の国で、首都はオスロです。産業は漁業や石油が有名で、税金が高く福祉が充実している高負担高福祉の国、とよく言われています。今回参加した「フッティルーテン」という会社のオーロラクルーズは、私が大好きなディズニー映画「アナと雪の女王」のモデルになった、ノルウェー第2の都市ベルゲンから始まり、複数の寄港地で観光しながら、最北の都市トロムソを目指す、というものです。もしオーロラを見れなかった場合は次回の無料クルーズを提供すると公式サイトに載せる程、オーロラを見ることができる確率が非常に高いこと、また大きなオーロラは海で鏡張りになること、かつ日中は憧れであったノルウェーの非都市部を観光できるというメリットがあり、クルーズでオーロラを狙うことにしました。
ところで皆さん、オーロラと聞くと何色を思い描くでしょうか?私は緑色を思い描いていました。
クルーズ中に「オーロラが出ました」という放送があれば、暖かく穏やかな船内から急いで極寒の甲板に出てオーロラを見る、という流れで、いざ1回目その放送で急いで外に出た時は、遠くの方に白い雲か霞が出ているように見えただけでした。正直期待外れでしたが、2回目の放送では見事、空に薄緑色の揺らめくオーロラを見ることができました。しかし写真を撮っていてふと気付くと、なんとオーロラはまた白くなっています。ただ写真に映ったオーロラは緑色のままです。グーグル検索で「オーロラ 白い なぜ」と検索しても全く分からなかったのですが、ここでふと大学時代の組織学の授業を思い出しました。眼には錐体細胞(すいたいさいぼう)と桿体細胞(かんたいさいぼう)があり、それぞれ主に明るいところと暗いところを担当しています。錐体細胞(すいたいさいぼう)は色や形を見分けるのが得意(だが代わりに暗いところではよく分からない)、一方桿体細胞(かんたいさいぼう)は暗いところでも光を集めるのが得意(だが代わりに色はよく分からない)、といった役割を持っています。部屋の電気を消した時は暗くて何も見えないけど、しばらくしたら慣れて見えるようになるが、色はよく分からない、ということは皆さん実体験で感じていると思いますが、あれは錐体細胞(すいたいさいぼう)から桿体細胞(かんたいさいぼう)に5〜10分程かけて役割を変更するからです(暗順応(あんじゅんのう)と言います)。
そこで気付いたのが、クルーズ船内の明るい環境に慣れた目(錐体細胞(すいたいさいぼう))で甲板に出てすぐに見たオーロラは本来の色である薄緑色に見え、写真撮影などをして時間が経ち外の暗い環境に慣れた目(桿体細胞(かんたいさいぼう))で見たオーロラは白色に見えた、のだと分かりました。観光のつもりが大学の基礎講義の復習、および実践にもなり、やはり知識というのは人生を豊かにすると実感しました。
現在、ノルウェー旅行で使った防寒着を再利用し通勤に使っています。
どのクルーズもそうですが、参加したクルーズの船客もほとんどが高齢者であり、あまり自分で動き回らなくても良い観光方法として、クルーズはオススメです。料金は高いですが、移動費・宿泊費やその手間を考えると悪くはありません。
憧れの旅行先としていつか、オーロラクルーズも選択肢の1つにどうでしょうか?