くらし 地域活動応援日誌 Day.41

■発酵の魅力につかまる
地域おこし協力隊 藤原 忍

那智勝浦町太田地区に引越してきてからもうすぐ2年、最近は味噌造りや糀(こうじ)造りに強く興味を持つようになりました。きっかけは移住してきてから携わった『おはつ』の伝統を絶やさないために作った加工場。加工場に満ちる糀の深い香りと、幸子さんとちよ子さんの丁寧な手仕事を目にしたときは、こんな大変なことを引き継いでくれる人はいるのだろうか。それは単なる調味料の製造ではなく何十年にもわたって作り上げられてきた人の「人生そのもの」そして「伝統」の営みでした。
引き継いでくれる人は見つからないまま、太田の郷でお二人のサポートをうけ糀造りからスタート。そしてそのまま「発酵」という魅力にのめり込んでいくのでした。もっと勉強したく、醗酵食品の資格をとり毎日微生物と向き合う日々です。
味噌や糀は、日本の食文化の根幹とも言える存在です。けれど、その奥深さに気づくまで、私はその価値をきちんと理解していませんでした。知れば知るほど、発酵のメカニズム、気候や原料との繊細な関係、人の手による管理の重要性など奥が深く、「もっと勉強しなければ」と思わされます。味噌造りや糀造りには、機械では代替できない人の感覚が必要です。微生物の働きや変化を敏感に感じとらなければなりません。その技術は、私たちが生まれるはるか昔から生活してきた人たちが長年の経験と観察の積み重ねの歴史と努力の結晶。
まさに、守り、伝えていくべき「伝統と知恵」なんだと。
今、日本の食文化は便利さや即席性を求める流れの中で、こうした伝統が少しずつ姿を消しつつあります。しかし私は、この魅力に引き込まれた一人として、何とかして味噌や糀、発酵の文化を守っていきたいと強く感じています。小さな一歩でも、学び、体験し、そして伝えること。それを私はここ太田で大切に守っていきたいです。