くらし 南部町のいきものたち(220)

■ベッコウハゴロモ
◇サンバな虫?
2022年7月17日、地区行事のため森の中の神社で夏の神事の準備をしていた時のこと。ふと、視界の端に白い小さなものがピンと跳ねたのです。「ん?」と謎の物体に近づいてみたら、見覚えのある姿に「あらま!」と声が出ました。腰こしみの蓑のような細い針状の蝋ろう物質をお尻の周りに付けているベッコウハゴロモの幼虫です。身近な生き物たちが数多く登場する漫画『とりぱん』(とりのなん子・講談社)の14巻48ページには「なにこのサンバな虫!」と表現されていたのですが、ベッコウハゴロモが紹介されている作品は、他にはあまりないかもしれませんね。

◇学名に日本の名が
お尻から火花が散っているようだとか、紅白歌合戦の某歌手の衣装のようだとか、ネットでは幼虫の外観が思い思いのものに例えられています。個人的に気になるのは、目を回しているような縞模様の複眼です。まさに漫画のような厚いレンズの眼鏡をかけているような表情に愛嬌を感じます。そんなベッコウハゴロモは、北海道から沖縄まで分布している普通種で、学名にもjaponicaが使われています。海外では台湾がもともといたエリアです。しかし、ここにも外来種問題が浮上。ロシアやトルコでの定着情報もあったり、日本では似た腰蓑を持つ外来種チュウゴクアミガサハゴロモが増加中という報告もあったり、観察する時にも注意が必要になってきました。

◇べっ甲の名前
海亀の一種、タイマイの甲羅で作られる加工品を「べっ甲」と呼びます。今はタイマイはワシントン条約により商業取引は禁止されていますが、べっ甲の名の付く生き物が色々といます。ベッコウトンボ、ベッコウサンショウウオ、ベッコウガガンボとその数30種以上。町内でいくつの「べっこうさん」たちに出会えるか、リストを作ってみたくなりました。クズでよく見られるハゴロモのべっこうさん、皆さんのお庭にもいるかもしれませんよ。