- 発行日 :
- 自治体名 : 鳥取県南部町
- 広報紙名 : 広報なんぶ 2025年8月号
■ヘクソカズラ
◇かわいい花なのに
普通に見られる在来種のつる植物、ヘクソカズラ。なんとも気の毒な名前が付けられたものです。日本の植物でも「屁」と「糞」が使われているのは他に聞いたことがありません。その由来は独特な匂いです。フェンスに絡んだつるを取り除こうとむしったりすると、細胞が傷付き、メチルメルカプタンという成分が発生して、それが異臭を放ちます。害虫から身を守るための戦略が、姿に似合わないネーミングとなってしまいました。
◇サオトメカズラ
標準和名のヘクソカズラと対照的に、別名のサオトメカズラの字面と音の響きは、大きく印象が違い、漢字では早乙女葛と表記されます。早乙女とは田植えをする娘のことで、彼女たちが被っていたツバが大きく上に尖っている編み笠に似ていると『山渓名前図鑑野草の名前夏』(高橋勝雄・山と渓谷社)に紹介されていました。しかしながら、ネット検索では頂部が山型の笠はなかなか出てこず。先の図鑑のイラストが手元で得られた唯一の資料です。個人的には、実際に早乙女を見たことがなくても、サオトメカズラと呼びたい面持ちです。アホウドリもオキノタユウにしたいと鳥類研究者の声があり、なんとなく思いが重なりました。
◇意外と多い変わり種
1cmほどの釣鐘型の白い花冠は通常、外は白で、花の中は濃い紅紫色の2色の組み合わせです。ところが、以前法勝寺のコンビニの駐車場で見つけたヘクソカズラは様相が違っていました。ラッパ型の花が、濃いピンク色に染まっていたのです。変種なのか、亜種なのか?とその時は謎のまま、写真だけ撮ってその場を立ち去りました。後日調べたら、ヘクソカズラの花は、色々な変異があることが分かりました。花全体が濃い赤紫色になったり、花の中央の赤い模様が四角や丸や梅型、星形、六角形など変化があったり、花弁のフリルが大きかったり、小さかったり、桃色に染まっていたりと、多様なバージョンがあるようです。これまでは、身近過ぎる花として、じっくりと時間をかけて見たことがなかったのですが、今後、ヘクソカズラの生物多様性も気に留めてみたいと思います。
自然観察指導員 桐原真希