- 発行日 :
- 自治体名 : 島根県松江市
- 広報紙名 : 市報松江 2025年9月号
市は長年にわたり地域産業の発展に貢献された技能者を表彰しています。
令和6年度松江市手作り産業優良技能者表彰
■No.5 齋藤寛之(さいとうひろゆき)
米田酒造株式会社(東本町三丁目)
(奨励賞受賞)
推薦団体…島根県酒造組合
匠が日本酒の世界に興味を持ったのは、学生時代に出会った漫画『夏子の酒』がきっかけでした。幼いころから伝統産業に惹かれていた匠は、物語の中に描かれる酒造りの様子を見て、酒造会社への就職を志しました。職に就き、初めて自分の手が関わってできたお酒を口にしたときの感動は、今でも忘れられないといいます。
酒造りの中で冬は最も重要な時期で、一度製造が始まると、休む間もない日々が続きます。だからこそ匠が特に気をつけているのは「健康」でいることです。昔ながらの酒造りには力仕事も多く、日々のコンディション管理が欠かせません。「気力・体力が充実していれば、良い仕事ができる。自分の体が弱っていると、嗅覚や味覚も鈍ってくる」と話します。
「これからは、もっと地元の人に誇りに思ってもらえるようなお酒を造りたい」。匠は今、改めて酒造りを見直し、ふるさとのための酒造りに力を注いでいます。
■No.6 土屋知久(つちやともひさ)
布志名焼 雲善窯(玉湯町布志名)
(奨励賞受賞)
推薦団体…(一財)島根県物産協会
島根県ふるさと伝統工芸品に指定されている布志名焼の窯元、雲善窯の10代目である匠。雲善窯は、江戸時代に御用窯として藩のため茶器を製作していた歴史があります。昭和初期に入ると民藝運動が起こり、先々代がその流れを取り入れたことで、雲善窯にも日用茶器などの新たな作風が加わりました。現在の雲善窯は、鮮やかなコバルトブルーの器が目を引きます。これは匠が岐阜県の「陶磁器試験場」に通っていた時の釉薬の調合で生み出した色合いです。
匠は時代の流れに合わせる柔軟性を大切にし、他者の意見にも耳を傾けつつ、自らが納得できる作品づくりを心掛けています。その姿勢は、かつて先々代が新たな価値観を受け入れ、民藝を取り入れたように、今の時代の雲善窯をかたちづくる大きな力となっています。匠の持つ柔軟な姿勢こそが、伝統を受け継ぎ、未来へと歴史を繋ぐ鍵となっているのです。
この記事に関する問い合わせ:ものづくり産業支援センター
【電話】60-7101