スポーツ 21年間お疲れさまでした 青山 敏弘さん、たくさんの感動をありがとう

サンフレッチェ広島のレジェンド、青山敏弘選手が2024シーズンをもって現役を引退されました。2012、2013、2015年のJ1リーグ優勝、2022年のルヴァンカップ優勝など、数々の輝かしい功績を残し、今の強いチームの礎を築いた功労者です。サッカーに詳しくなくても、青山選手のことは知っているという方が多いのではないでしょうか。
吉田サッカー公園(現安芸高田市サッカー公園)で過ごした21年間の軌跡を振り返りながら、トップチームのコーチとして新たな一歩を踏み出す青山さんに、お話を伺いました。

■青山 敏弘(Toshihiro Aoyama)
1986年2月22日生まれ。岡山県倉敷市出身。作陽高校卒業後、サンフレッチェ広島に加入し、2004年にプロデビュー。左膝前十字靱帯(じんたい)断裂や左膝内側半月板損傷など、選手生命を脅かすような大きなけがを幾度も乗り越え復活を果たしてきた。
2015年Jリーグ最優秀選手賞(MVP)を受賞。2014年ブラジルW杯、2019年アジア杯出場。2024シーズンで現役引退し、トップチームコーチに就任。

■現役時代の青山さんと安芸高田市の関わりを振り返って
・2015年 「ふれあいサッカーフェスティバル」でのミニゲームに青山選手が参加。大変な盛り上がりをみせました。
・2018年 青山選手やコーチたちが小田東小学校(当時)を訪問。児童たちは青山選手との交流を楽しみました。
・2019年 シーズンを終えて市役所を表敬訪問してくださいました。
・「令和4年度あきたかた二十歳のつどい」にビデオメッセージを贈ってくださいました。

■地域との絆やファンとの交流を大切にした現役生活
◇青山さんにとって安芸高田市はどんな存在?
サンフレッチェ広島に入ってから21年間、ずっと安芸高田市の練習場で練習してきました。ここで培った強い体や戦術を試合に生かし、多くの勝利や敗北を経験しました。安芸高田市は自分にとっての原点だと感じています。

◇〝神対応〞と称されるファンサービスへのこだわりとは?
昔はファンの方の数が少なく、直接触れ合う機会も限られていました。でも、その数が少しずつ増えていく過程を経験できたのは本当にうれしかったです。ファンの皆さんを大切にしようと心掛け、どんなに人数が増えても交流の時間を大事にしてきました。安芸高田市に住むファンの方も多く、「どこに住んでるの?」なんて話すのがとても楽しかったです。こうした交流が、自分がここにいる意味を大きくしてくれたと思っています。

◇安芸高田市の好きなところは?
買い物に行くと気軽に話し掛けてもらえることが多いです。サッカー選手というよりも、普通に「青山さん」と呼んでいただいて会話ができる、その親しみやすい距離感が好きです。また、寒さや雪といった環境も、自分が育った岡山の倉敷にはないもので、楽しく感じます。雪が積もった日は、スキッベ監督も練習場の雪かきをしてくれるんですよ。面白いそうです(笑)。安芸高田市の自然を楽しんでくれている姿を見ると、なんだかうれしくなりますね。

◇パブリックビューイングが盛り上がっています。
ここ3年くらいですよね。もちろん知っていますし、人気だと聞いてとてもうれしいです。いつか行ってみたいですし、サプライズゲストとして呼ばれて喜んでもらえるなら、ぜひ参加してみたいです。あと例えば、クリスタルアージョみたいな場所で、みんなで応援できるようなイベントがあったらさらにいいですよね。子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、三世代がそろって一緒に楽しめる場があれば、きっともっと盛り上がると思います。そういう場が増えれば、本当に楽しいだろうなと感じますね。

◇吉田高校に通うユースの選手たちへの思いを聞かせてください。
ふるさと納税の寄附を活用してサッカー公園の整備が進んだことを、とてもうれしく感じています。ここで育った選手たちがトップチームで活躍することこそが、何よりの恩返しだと思っています。ユース出身で活躍している選手の数はJリーグでもトップクラスに多く、海外で挑戦したり、日本代表に選ばれる選手も数多くいます。ユース出身選手のレベルがこれほど高いのは、これまで地域とともに大切に育んできたものが確実につながっているからだと感じます。これからも、安芸高田市とサンフレッチェ広島との関係をさらに深め、育成の取り組みを一層広げていきたいです。

■人間的な成長を重視し︑安芸高田市と共に自らも成長
◇今後、ユースと関わることもありそうですか?
今後トップチームを中心にコーチとして活動しますが、機会をいただけるのであれば、育成にも興味があります。実際、トップチームが練習するすぐ隣でユースの選手たちが練習していることは多いですし、自然と関わる機会があるので。
また、安芸高田市との関係が非常に良好で、吉田高校の協力体制がなければ、ユースの選手たちのレベルを維持したり、さらに向上させたりすることは難しいと思います。その意味で、地域との連携の強さを改めて感じています。これまで培ってきた歴史や大切にしてきたものを、これからもさらに強く、太いものにしていきたいです。
それと、小学校にサッカー指導に行ってみたいですね。子どもたちを大切にしたいという思いが強いので、個人としてもクラブ全体としても、子どもに関わる取り組みをもっと増やしていきたいと思っています。

◇どのようなコーチ像を描いていますか?
コーチとして自分がどう変わっていくのかが楽しみですね。コーチ目線というのは、選手のときとはまた違うものだと思います。プレーだけではなく、選手個々の生活面も含めてしっかりサポートしていきたいです。
サッカーは技術以外に、いかに人として成長できるかが大切だと思います。いろんな経験を積むことで、人間として大きく成長すれば、それがサッカー選手としての成長にもつながります。特に若い選手たちに対しては、できるだけ寄り添いながらサポートしていきたいと思っています。

◇青山さんの今後のビジョンは?
正直、特に大きなビジョンはないですね(笑)。ただ、これまで通り安芸高田市のお米を食べて、健康に生きていきたいと思っています。本当においしいですよね。私の体はこのお米で作られたと言っても過言ではないです。
お米がおいしいのは、水がきれいで土も良いからだと思います。地域の人たちがずっと大切に守ってきたものがあるからこその味ですね。そう考えると、田んぼもサッカーも似ていますね。安芸高田市には、これから育っていくものがたくさんあります。それらを見守りながら、自分自身も成長していきたいと思っています。