文化 安芸高田歴史紀行

■あの日の記憶は写真の中II[34]
安芸高田市歴史民俗博物館 学芸員 古川 恵子

◇1958(昭和33)年9月20日もしくは21日 向原高校創作オペラ「毛利元就」(歴史民俗博物館蔵)
向原高校は、創立10周年を迎えた文化祭で全校生徒が参加した創作オペラ「毛利元就」を披露しました。
創作の基にしたのは毛利元就の逸話「百万一心」。郡山城の難工事のために巡礼の娘が人柱に選ばれましたが毛利元就がこれ許さず、代わりに「百万一心」と刻んだ石を石垣の下に埋めることで工事を成功させたという話です。
構成・脚本・作曲は教師が担当し、生徒の意見も取り入れられています。演者は俳優、オーケストラ、合唱団、舞踊、邦楽演奏など約250人〔注〕が出演。他にも化学クラブが照明の制作、社会クラブは毛利元就の史跡調査や資料収集・衣装考証、家庭クラブも共同で衣装考証と衣装作り、園芸クラブは小道具の制作を担当するなど、5月から始まった準備は夏休みを返上して行われ、PTAや外部の支援も受け、学校を挙げての取り組みとなりました。
文化祭直前の新聞は「霧深い中国山脈の谷あいの一高校が、いま日本の音楽史にもかつてなかった途方もない壮挙をやってのけようとしている〔注〕」と紹介し注目の高さがうかがえます。
9月21日の一般公演は午前と午後、それぞれ約2時間に及ぶ2幕構成の本格的な舞台が披露され、郡外からも人が集まり、いずれも超満員で大盛況だったようです。〔注〕…1958年9月16日読売新聞に掲載