くらし 《特集》あなたの隣人、静かなる選択。下関市消防団(2)

■CHAPTER 2 消防団員座談会 round table
初対面の消防団員たちが語り合う、消防団のリアル。
飾らない言葉で交わされた、地域への真っすぐな思い。

・吉田分団
消防団歴3年目/会社員 今村 匠さん

・宇賀分団
消防団歴2年目/団体職員 中野亜紀さん

・王喜分団
消防団歴12年目/自営業 中村ひとみさん

▽THEME 1 なぜ消防団に?入団のきっかけ
今村:僕は会社近くの居酒屋で盛り上がっていたら、隣の席から女性が来て「その元気を消防団にっ!」と勧誘されました。
中村:すごい勧誘! スカウトじゃないですか(笑)。
今村:父が消防団員で、消防団が何かは知っていました。でもいざ自分が…。僕の地元は福岡ですが「日ごろお世話になっている地域に何かしたい。この元気を地域に!」と思い入団しました。
中野:完璧な回答ですね。準備してきています?
今村:いやいや本心です!
中野:私は小さい頃、火を消す父の姿を見て育ちました。その姿がとても印象的で…。父の引退を機に、私がその後を継ぐ形になりました。入団早々、消防操法大会にも出場しましたよ。
中村:私は当時の分団長に「女性団員を募集しちょる」と言われたのがきっかけです。消防団に抵抗はまったくなかったですが「一人ではちょっと…」という気持ちがあったので、知人と一緒に入団しました。

▽THEME 2 消防団の雰囲気は?
今村:僕にはめちゃくちゃ合っています。もちろん、誰にでも合うとは限らないです。でも年齢関係なく仲良く、雰囲気も最高です。
それと、目的が明確な点がいい。例えば、消防操法大会に出るなら優勝しよう、そのために選手ではない人が機材の準備をしてくれたり、選手の代理を引き受けてくれたり…仕事の夜勤とかで参加できないことも当然ありますからね。また訓練ばかりではなくて、花火警戒で夏祭りに参加したときにも、かわいがってもらえます。
中村:王喜分団も仲良いです。息子が就職で下関に帰って来るんですけど「俺も入団しようかな」って言うくらい。親睦会で一緒だったらどうしようかな(笑)。
中野:分団には、いくつかの部がありますよね。私は消防団歴2年目で、自分の部のことしか分かりませんが、皆さんに負けないくらい、仲が良いです。

▽THEME 3 地域に潜む危険性は?
中野:6月の大雨で国道191号に落石があって、全面通行止めでしたよね。私も家に帰れなくて…。仮に大きな災害が発生し、長期化した場合、高齢者が孤立化する可能性が高いなと改めて感じました。
今村:災害になったときの備えなどはあるんですか?
中野:備えではないですが、どこに誰が住み、何人家族かなどは、消防団をはじめ地域のみんなが知っています。それは、早期の安否確認や救助活動につながると思います。
中村:田舎ならではの良さですね。地域性が出ますね。土砂災害や川の氾濫はどこでも起こることですよね。
今村:木屋川は王喜と吉田にも流れている川です。これも吉田地域だけの話ではないですが、古い家や空き家が所狭しと並んで建っている風景を目にします。火災による延焼が怖いです。
中村:この本紙掲載の火災写真(5)は(令和7年)5月に長崎町で発生したときのものですね。

▽THEME 4 消防団と地域防災について考える
中野:団員の高齢化っていうのは1つありますよね?
今村:入団以上に退団が多いんでしょうね。
中村:「入団したけど活動に参加できなくてごめんなさい」という気持ちになって辞められる方もいますね。全部が全部、今月はこれに出て、来月はあれに出て…無理ですよね。
今村:全部は無理です。全部ありきで考えちゃうと入団にためらいが出ますよ。
中村:みんな仕事も家庭もあって忙しい。「スキマ時間でいいからおいで」とかでいいんじゃないかなって私は思います。
中野:消防団の活動が知られていないことも原因かもしれません。まず知ってもらうことが大切ではないでしょうか。「若いから、体力があるからできる」という声をよく聞きますが、想像と実際にギャップがあるように感じます。例えば全員が体力があるわけでもなく、消防操法大会に出るわけではないです。
今村:そういえば先日、清末東町で火災がありましたよね。多くの消防団員が駆け付けたとか。
中野:防災メールで確認しました。地域を問わず大丈夫なのか気になっちゃいますね。
中村:私も実際に家の近くで火災がありました。すぐに現場に向かい、消防車の到着時間を短縮するためにも交通整理をしました。手伝えることがあったら何かしたい。「女性だからいいよ」っていう場面も当然あるかもしれないけど、女性だからできることもあると思っています。
今村:同じ志を持った別の分団の方とお話ができて良かったです。刺激になります。この前の消防操法大会では、皆さんともっと交流したかったです。
中野:消防団員同士の交流は、地域防災の士気向上にもつながりますね。
中村:皆さんの声を聞いて、下関の未来が少し明るく見えてきました。
全員:本日はありがとうございました。

問合先:消防局警防課
【電話】233-9112