文化 すまいる~継承される伝統の舞と地域の絆を残すために

■Vol.189 安村道典(みちのり)さん(行波在住)
国指定重要無形民俗文化財である「岩国行波の神舞」の保存会長を務め、伝統文化の継承に尽力している。
第40回岩国行波の神舞は前夜祭が4月5日(土)、本祭が4月6日(日)に行われる。

「岩国行波(ゆかば)の神舞(かんまい)」の式年祭は、行波の河川敷に舞台である神殿(かんどん)が組まれ、数えで7年に一度、12座と八関(はっせき)の舞が約15時間にわたり披露されます。
この神楽を継承するため活動している「岩国行波の神舞保存会」の会長を務めているのが、安村道典さんです。
行波で生まれ育った安村さんは、生活の中にいつも神楽がありました。
「昔は地域に子供がたくさんいて、みんな神楽をやりたがった。大規模な舞台で初めて舞った時は感動して、行波に生まれたら神楽をやるという使命感が強くなった。昭和54年に神舞が国の指定を受けてからは、地域の機運がさらに上がった」と話します。
安村さんは子供の時からみんなが和気あいあいと楽しみながら稽古を行い、式年祭の準備では先輩たちが自分のできる役割をそれぞれ率先して行動する姿を見てきたそうです。
大人になってからも活動を続けてきた安村さんは、そうした経験から雰囲気づくりを大切にしています。
「今もサークルみたいに楽しみつつ技術を磨き、何をやってもまとまりが早いのは受け継がれている。それは子供たちへの社会教育にもつながっている」と言います。
安村さんは今回、初めて実行委員長の立場で式年祭に臨みます。会場設営の準備を進めながら、自身が20分以上舞う演目の稽古にも励んでいます。
「責任がついてくると考えることが多い。たくさんの人が見に来てくれるので、しっかり準備して披露しないといけない。思っていた以上にプレッシャーを感じるが、良い仲間に恵まれ、みんなに助けられている」と話します。
少子高齢化が進み、地域で人手が足りない中、安村さんは受け継がれてきた式年祭の規模を維持していくことが今後の課題と感じています。
「若い世代も頑張ってくれているから、存続に向けてより良い形を作って、伝統をつないでいきたい」と語り、地域のつながりを大事にしながら、今日も活動を続けています。