- 発行日 :
- 自治体名 : 香川県丸亀市
- 広報紙名 : 広報まるがめ 令和7年11月号
【手島物語 島の風土に寄り添いながら、島の未来を育てる】
てしま島苑
・松下 龍平さん(移住7年目/埼玉県出身)
・松原 恵美さん(移住7年目/京都府出身)
◆器を通して島の魅力を伝えたい
陶芸家・松下龍平さんと松原恵美さんが営む「てしま島苑」。島にある素材だけを使い、器が生まれる全ての工程に向き合う”はじまりの見えるものづくり“を大切にしています。島の粘土を掘り、身近な植物の灰を釉薬(ゆうやく)に―「時間も手間もかかるけれど、自分たちでできる」。その確信が、ものづくりの原点を支えています。
てしま島苑では「空豆株主制度」というユニークなプロジェクトを令和4年からスタートさせました。きっかけは、農家が丹精込めて育てた空豆が顧客に届かないこと、そしててしま島苑収穫後の株が畑に放置され、朽ちていく様子を「もったいない」と感じたことでした。
この仕組みでは、空豆の”株“を購入すると、配当として、収穫された空豆と、てしま島苑が手掛けた器が届きます。器には、空豆のさや殻や茎を焼いてできた灰が釉薬として使われています。全国にファンが広がっており、株主限定の収穫体験や、器づくりの工程を学べるイベントも開催されています。県外からの参加者も増え、島の魅力を体感するきっかけとなっています。
「器を通して、少しでも島の魅力を感じてもらえたら」と語る松下さんと松原さん。島の土、植物、人の手が重なり合って生まれる器には、島の豊かさと、そこに暮らす人たちの思いが静かに宿っています。
てしま島苑の取り組みは、島の資源を生かし、自然と人をつなぎながら、持続可能な地域づくりを目指す新しいかたちとなっています。
・一般社団法人 島に灯代表 髙村 光平さん(移住7年目/ 神奈川県出身)
・田嶋 里菜さん(移住歴 広島に6年・手島1年目/静岡県出身)
◆島に灯を
令和5年10月、手島に「一般社団法人 島に灯(あかり)」が誕生しました。その名には、島に灯がともる風景を残していきたいという願いが込められています。代表の髙村光平さんは、旧手島小中学校の校舎を活用した宿泊施設「手島自然教育センター」の指定管理者として、島の人たちとともに施設の運営に取り組んでいます。今後は、空き家や島の景観の管理にも力を入れていく予定です。画家として活躍する田嶋里菜さんも広島から移住し、現在はスタッフとして地域づくりに参加しています。
また、「島に灯」は、島に伝わる伝統芸能「金之丞踊り」の継承にも尽力。島で唯一の踊り手・宮本サトコさんから直接踊りを学び、恒例の盆踊りで披露しました。「手探りだけど、島で踊れる人をつなげられたら。文化の灯を絶やしたくない」と語る髙村さんの言葉には、島の歴史と島民への深い敬意が込められています。
小さな島にともる一つの灯。それは、文化を守り、未来へつなぐ力となっています。
・手島自然教育センター
※二次元コードは本誌P.6をご覧ください。
今回の特集では、移住者が紡ぐ暮らしの物語を紹介しました。移住者が見つけた静かな時間や豊かな自然、人とのつながり。そして、地元の人が守り続けてきた日常の風景―外からの視点と、内にある思いが重なり合うことで、新しい風景が生まれます。 取材では、島民が参加する盆踊りにもご一緒させていただきました。そこには、長年祭りを支えてきた人たちや、伝統を受け継ぐ若者たち、この日に合わせて島外から訪れた人たちの姿がありました。踊りの輪の中で交わる笑顔や声が、世代や立場を越えてつながっていく様子は、地域の魅力そのもの。かたちを変えながらも受け継がれる伝統には、人と人との思いが込められていました。
こうした場があることで、人は地域に関心を持ち、足を運び、関わり始めます。誰かの「気づき」が次の「動き」につながり、地域の未来をつくっていきます。
地域の魅力が伝われば、人が集まり、会話が生まれ、面白いことが始まる。そんな循環が、暮らしを豊かにしていくはずです。その変化のきっかけは、私たち自身がつくっていけるのかもしれません。
広島・手島など離島の観光・移住についてはこちら
・Webまるがめせとうち島旅ノート
・YouTube瀬戸内まるがめ(離島情報)
※二次元コードは本誌P.7をご覧ください。
※詳細は本誌P.2~P.7をご覧ください。
