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●子宮頸がんを予防するために10代でワクチン、20歳からは検診を~高校1年生相当の女子は早めの接種を~
飯塚市立病院 薬剤室
室長 山下(やました) 崇(たかし)

子宮頸がんとは、子宮の入り口部分(頸部)にできるがんです。日本においては年間約11,000人が発症し、毎年約2,900人が亡くなっています。子宮頸がんは出産年齢期の20~30歳代の女性に発見されるケースが多く、発症率は年々増加しています。妊娠の検査中に子宮頸がんと診断される例もあります。初期の子宮頸がんには、ほとんど自覚症状がありません。進行すると生理に関係がない出血がある、茶色のおりものが増える、悪臭を伴う、下腹部や腰が痛むなどの症状が出てきます。
子宮頸がんの原因は、ヒトパピローマウイルス(以下HPV)です。HPVはありふれたウイルスで、異性との性経験のある女性の84.6%が一生に一度はHPVに感染すると推計されています。通常は感染しても自然に排除されますが、長い間感染が続いた場合、細胞が少しずつがん細胞へと変化していくことがあります。
子宮頸がんの予防法は、ワクチン接種と検診です。ワクチンは公費によりHPVワクチンの接種が可能で、小学6年生~高校1年生相当の女子は公費(無料)で接種することができます。しかし子宮頸がんを100%予防できるわけではありません。国の指針としては、20歳以上の女性において2年に1回の検診が推奨されています。高校1年生相当の女子にとって、公費による接種の機会は今年度末(令和8年3月末)までです(但し、6か月以内に3回接種する必要があるため、1回目の接種を今年の9月末までに行う必要があります)。是非この機会にHPVワクチンの接種をご検討ください。
令和5年4月から、『シルガード9』という新薬も公費で受けられるようになっています。シルガード9では、9つのHPV型に対する抗体が作られます(従来は4つの型でした)。これは子宮頸がんの原因となるHPV型の88.2%をカバーします。シルガード9は年齢によって接種回数が異なり、2回もしくは3回行います。事前に医師に接種回数を確認してください。
残念ながら日本は、病気にならないための予防医学の取り組みがなかなか浸透していません。実際に子宮頸がん検診の受診率は43.7%、HPVワクチンの接種率は29%(令和4年)と先進国の中でも非常に低い水準で推移しています。子宮頸がんは予防することが出来るがんです。「10代でワクチンを!20歳からは検診を!」これを合言葉にしていきましょう。

※飯塚市立病院よりお願い
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