くらし 輝く島原人 THE SCENE Vol.90 島原に生きる

■故郷に響け島原土搗(ドーヅキ)唄

「人生の達人」
森 忠義(もり ただよし)さん(80)
昭和19年、島原市有明町大三東で生まれる。教職の道を志し大学卒業後、小学校教諭として島原半島を中心に県内小学校に勤務。平成16年に神代小学校で定年退職を迎える。定年退職後は民生委員児童委員を9年間務め、三会地区の会長も努めるなど地域福祉の推進に尽力。
島原土搗唄保存会の活動では平成30年度から会長として、郷土に残る民俗芸能を継承していくため、三会小学校・中学校での体験学習やイベントなどでの実演など、伝承活動に精力的に取り組んでいる。本年1月には第39回長崎県地域文化章を団体として受章。洗切町在住。

▽島原土搗唄の復活
島原半島には、建物を新築する際に基礎工事の土固めの作業唄、祝い唄として「土搗(ドーヅキ)唄」が伝わっています。三会地区では「島原土搗唄保存会」を設立して伝承活動に取り組んでいます。「初めて土搗きを見たのは小学生の頃。やぐらを組んで大工さんたちが唄に合わせて威勢よく土搗きをする姿を覚えています。」と、語るのは会長として熱心に活動に取り組む森忠義さんです。
土搗きは昭和30年頃までは、家の基礎土台を強固にするための重要な作業として、全て人力で行われていましたが、時代の変化とともに建設工事の機械化が進み、土搗唄も次第に忘れられていきました。そこで、三会地区では当時の唄い手や経験された古老がおられるうちに、郷土の民俗芸能として後世に伝え残していこうという地元有志の熱い思いで、平成6年9月に島原土搗唄保存会(初代会長本多喜代寿)が発足しました。
「もともと作業唄であり、曲目や楽器の演奏もありませんでしたが、現代風にアレンジするため、大正琴の音色と太鼓の響きを入れたリズムを作り、踊りを創作して、多くの人に親しんでもらえるような形にしています。唄にリズムを付けたり、囃子(はやし)と楽器演奏との調子を合わせるのが難しく、上手に演奏できるようになるまで相当の練習を要しており、かなり苦労されたようです。」と、語ります。

▽故郷の文化遺産を次世代へ
発足後の活動は地元の三会小・中学校での体験学習や三会温泉神社まつり、三会ふれあいフェスティバルなどへの出演のほか、平成17年の三会温泉神社改築や平成30年の市役所新庁舎起工式でも実演を行うなど、精力的に活動を続けてきました。
そして、これまでの伝承活動が認められ本年1月に第39回長崎県地域文化章を受章しました。「先人の土搗唄の保存継承にかけた熱い気持ちを思い起こし、とても感慨深い気持ちでいっぱいです。昨年9月で結成30周年を迎えました。これまで地元三会地区や市の行事などで実演し、皆さんに郷土の民俗芸能を知ってもらえるような活動を続けてきました。最近は活動メンバーの高齢化とともに会員数も減少傾向にあり、新たな会員や協力者を増やしていくことが今後の課題です。先人が築いた島原土搗唄を故郷の文化遺産として次の世代へ受け継がれていけるように、これからも活動を続けていきます。」と、力強く語っていただきました。