文化 わがまち再発見『文化財のみかた』第17回

■対馬の石塔(3)~豆酘内院の石塔群~
今月号は、長崎県指定有形文化財「対馬内院(ないいん)の宝篋印塔(ほうきょういんとう)と五輪塔(ごりんとう)群」を紹介します。
厳原町豆酘内院の奈伊良(ないら)神社参道脇には、高さ約3mの巨大な宝篋印塔が極めて良い状態で建っています。この宝篋印塔は、マグマが地下深くでゆっくり冷えてできた花こう岩を石材として用いています。花こう岩は別名「御影石(みかげいし)」とも呼ばれ、その名称は兵庫県神戸市東灘(ひがしなだ)区の御影地域に由来します。内院の宝篋印塔も現在の兵庫県で製作され、瀬戸内海を介して対馬に搬入されたと言われています。内院の宝篋印塔は、畿内地方に残る花こう岩製、かつ紀年銘(きねんめい)(製作年)が刻まれているものと比較すると、14世紀後半の製作と推定されます。
また、宝篋印塔がある旧内院小中学校の敷地内には、五輪塔と呼ばれる石塔が複数建てられています。これらは先月号でも紹介した日引(ひびき)石を加工した五輪塔群であり、その一つに「応安7年(1374)」の年紀が刻まれているものがあるなど、製作地と年代が分かることが特徴的です。
内院の宝篋印塔と五輪塔群は、前期倭寇が活動していた14世紀後半に製作されたといわれています。そして、日本海ルートだけではなく瀬戸内海ルートを介して対馬に搬入されたと言われる経路からも、彼らが海上交易にともない、日本各地に複数のネットワークを持っていたことがうかがえます。

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