- 発行日 :
- 自治体名 : 長崎県壱岐市
- 広報紙名 : 広報いき 2025年7月号 No.256
■持続可能な農業の実現に向けた挑戦
農業は単に作物を育てるだけでなく、地域経済を支え、働く人々に生きがいをもたらす重要な産業です。本市では、農業を通じて新たな価値を創出し、地域の活性化を目指しています。今回は、本市が取り組む先端の取り組みや期待される効果、挑戦する人の想いについて3名の方々にお話を伺いました。
○ルートレック・ネットワークス株式会社 國分 千恵(こくぶん ちえ)さん
Q:業務内容について教えてください。
当社が開発するAI潅水施肥システム「ゼロアグリ」を活用し、壱岐市に、アスパラガス高畝栽培×スマート農業を実証する自社圃場(ルートレックファーム)を開設しました。壱岐のアスパラ生産力向上のために、農協など関係機関と協力して、様々な検証を行っています。
Q:どのようなシステムなのか教えてください。
このシステムは、土壌中のセンサーやGPSを活用して環境データを収集します。土壌の水分値、日射量などを測定し、おおよその葉の蒸散量をAIが計算して、必要な分の水や肥料を自動で供給します。特に給水・施肥は「少量多頻度潅水」という考え方に基づき、必要とする量を計算し、1日に複数回に分けて供給するよう調整されます。
また、自動でのハウス環境制御も行います。例えば、ハウス内の温度がアスパラガスの適温とされる約25℃から外れる場合、自動でハウスを開閉するなどして温度調整を行います。肥料の管理においては、肥料に含まれる窒素分の値をセンサーで測定し、正しく把握することで、肥料の使用量を抑えることができます。これにより、地下水汚染やメタンガス発生の抑制につながり、環境負荷の低減にも貢献します。
Q:自動潅水・施肥システムの使い方とメリットを教えてください。
システムの操作は基本的にスマートフォンで行います。これまで農家さんは、天候や体調に関わらず、圃場に行って調整作業を行う必要がありましたが、システムを導入することで、場所を選ばずに管理ができるようになります。これにより、農家さんは、空いた時間を他の作業に充てることが可能になり、プライベートな時間も充実させることができると考えています。
また、新規就農者にとっては、経験がなくてもシステムが適切な水やりや肥料の量を判断してくれるため、失敗しにくいというメリットがあります。長年農業をされている方にとっては、自身の感覚で行ってきた技術を数字として残すことができ、マニュアル化して次世代に継承することも可能になります。
※詳しくは本紙をご覧ください。
Q:「高畝栽培」について教えてください。
アスパラガスは収穫の際、しゃがみ込んで作業する必要があり、大きな身体的負担となっています。そこで、高畝という新しい技術を導入し、畝を高くすることで、高齢の方でも長くアスパラガス栽培を続けられることが期待されています。また、点滴チューブを併用することで、ぬかるみの中で作業をすることもなく、湿度管理もしやすいので、労力を大幅に削減しながら湿気による病気を抑えることができます。