文化 きじ馬の製作技術・国の選択無形民俗文化財へ

国の文化審議会は、九州地方に伝わる伝統的玩具「きじ馬・きじ車」の製作技術について、国が記録を残すべきだと認める「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財(国選択無形民俗文化財)」に登録するよう、1月24日に文化庁長官に答申しました。
九州の代表的な「きじ馬・きじ車」は、福岡県みやま市の「きじ車」や大分県玖珠町(くすまち)北山田地区の「きじ車」、人吉球磨地域の「きじ馬」などがあります。
きじ馬を製作する担い手の高齢化やなりわいの変化で、消滅の恐れが高いことなどから今回選ばれ、答申後は国から正式に選択されます。県内の国選択無形民俗文化財の選定は、令和元年の「高森のにわか」以来で、13件目となります。
答申…文化審議会が国に対して文化財の指定や追加指定を行うよう意見を述べること


・平家の落人が人吉の奥地で都をしのんで作り始めた
・山から山へ移動していた木地師(きじし)(木工職人)が里に下りて売っていたのが「きじ馬」として広まった
・球磨川下りが盛んだったころに船大工が作って広まった
・子どもたちがまたがって馬乗りし、遊んだことからきじ馬という名前になった
・元々は、着色しない素地のままだった
・人吉藩時代に大火事が起きた後、金鶏(ミャンマーの火除(ひよ)けのお守り)の色に似せた
・青井阿蘇神社に奉納するために縁起のいい色を使用した
※全て言い伝えによるものです。


人吉球磨の「きじ馬」はキリ・ダラ・フジ・カシワなどの雑木を材料として作られる熊本県を代表する郷土玩具。野鳥のキジをかたどった車型の玩具で、子どもが紐を付けて引いたり、上に乗ったりして遊ぶ。かつては旧暦の2月に春の市が開かれ、露店で売られている「きじ馬」を男の子に、「花手箱」を女の子に買って帰ることがこの地域の習わしだった。ほかの地域のきじ車と比べると、くらがないことなどが特徴。


熊本県では現在、球磨郡錦町の住岡郷土玩具製作所と人吉市中林町の宮原工芸の2カ所だけがきじ馬を製作・販売しています。地域の宝に選定されたきじ馬作りに対する思いを聞きました。

■父が残した財産を残していく
・住岡郷土玩具製作所 住岡 忠嘉さん

初代の住岡喜太郎さんの創業から今年で百年目。今は2代目の忠嘉(ただよし)さんと3代目の孝行(たかゆき)さんが受け継いでいます。初代の直線的な形のきじ馬に比べて、2代目の忠嘉さんのきじ馬は木の曲がりを利用した形が特徴。昔ながらの顔料を使用した絵付けは、同製作所のみで受け継がれています。今回の選定を受け、忠嘉さんは「技術は父から引き継いだ財産。父に変わってお礼を言いたい」と喜びの声。孝行さんは「使用する木材が非常に手に入りにくくなっているので、今後きじ馬は貴重なものになっていくかもしれません」と話していました。

■興味を持ってくれる人に技術を受け継ぎたい
・宮原工芸ひよ宮原ひよていさん

木工関係に携わっていた宮原健雄(けんお)さんが創業。2代目の清光(きよみつ)さんは現在療養中のため、妻のていさんが形作りから色付けまでの作業を全て1人で担い、きじ馬を守っています。今回の選定を受け、ていさんは「文化財に選択されることは非常にうれしく、きじ馬に携われたのは誇らしいこと。人生の一つでもあり私が生きた証です」。これからについて「今はきじ馬を作り続けることで精一杯。技術の伝承は敷居が高いと思われがちですが、誰もが興味を持ってくれるとうれしい。どうにかこの技術を残していきたいです」と話していました。