- 発行日 :
- 自治体名 : 大分県竹田市
- 広報紙名 : 広報たけた 2025年4月 NO.241
■静脈血栓塞栓症について
肺動脈(心臓から肺へ血液を送りだす血管)が血栓(血液の凝固物)で閉塞する疾患を肺血栓塞栓症と呼びます。その多くは、下肢深部の静脈血栓症から発症することから、肺血栓塞栓症と深部静脈血栓症は合わせて静脈血栓塞栓症と呼ばれています。この疾患は、食習慣の欧米化や高齢化により我が国でも近年増加しています。
原因として、下肢の血流停滞をもたらす心不全、肥満、長期臥床、下肢静脈瘤、妊娠、脱水、長距離旅行、あるいは災害避難時の車中泊などがあげられます。手術、カテーテル、長期間の点滴や静脈炎が誘因となることもあります。さらに、血栓形成を促進する因子として喫煙、凝固因子(止血に関連する体内物質)異常、糖尿病があります。
静脈血栓塞栓症の最も多い症状は、突然の呼吸困難です。肺血流が減少し、肺のガス交換機能が低下するために生じます。胸痛を自覚することもあり、重症例では失神や死に至る場合があります。
本症が疑われた場合は、血液ガス分析、血液凝固・生化学検査、心電図、心エコー、下肢静脈エコー、および胸部造影CTなどを実施します。血圧が安定している患者さんの場合、主として抗凝固療法が行われます。血液凝固を抑制する薬物で新たな血栓形成を予防し、血栓の縮小を促す治療です。ショック状態の患者さんに対しては、血栓溶解療法、カテーテル治療、外科的血栓摘出術、体外式膜型人工肺(ECMO)などが選択されます。
本症の予防は、可能なかぎり原因を除去することです。肥満の改善、禁煙、適度な運動が有効です。水分補給を心がけ、脱水を予防します。また、心不全、下肢静脈瘤、糖尿病などを適切に治療することも重要です。近年、各医療機関は入院中の静脈血栓塞栓症に対する『予防ガイドライン』を作成し対策を行っています。気になる症状を自覚された場合は、迷わず最寄りの医療機関を受診されることをお勧めします。
問合せ:竹田医師会病院 循環器内科 原
【電話】63-3241