くらし 「独居の時代」を越えて行く(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 宮崎県三股町
- 広報紙名 : 広報みまた 2025年6月1日号
約2200人―。
これは、人口約2万5000人の本町に住む、1人暮らしの高齢者、いわゆる「独居高齢者」の数です。本町も、多くの独居高齢者が生活する「独居の時代」ともいえる時代を迎えつつあります。
独居高齢者の中には日常生活や健康管理などで問題を抱える人や、周囲との関わりが希薄になり、孤独を感じる人もいるといわれています。今回は、そんな独居の時代を乗り越えるためのヒントを得るため、とある元・「民生委員・児童委員」と1人の住民の〝小さなつながり〟のお話を紹介します。「民生委員・児童委員」の活動がきっかけとなって生まれた〝小さなつながり〟の姿から、今後身近になっていく「独居の時代」を乗り越えるため、私たちに何ができるのか、その糸口を探ります。
■加速する独居の時代
○「5世帯に1世帯」独居高齢者が急激に増加
国の調査機関「国立社会保障・人口問題研究所」の調査結果によると、全国の独居高齢者の世帯数は、令和2年から令和32年にかけて1・47倍に、75歳以上は1・69倍に、さらに85歳以上は1・88倍になると見込まれています。
また、65歳以上で1人暮らしをしている世帯の割合は、令和32年には、全世帯のうち20・6%となる見通しであり、全国の5世帯に1世帯は独居高齢者の世帯となる見通しです。
※参考=国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』(令和6年推計)
○本町も、独居の時代へ
町高齢者支援課の調査によると、本町には約2200人もの独居高齢者がいます(3月31日現在)。家族と同じ家・敷地で暮らし世帯を分けている人も含めた数値ですが、単純に計算すると、世帯数1万470世帯(4月1日現在)に対して約21%と、およそ5世帯に1世帯は独居高齢者の世帯となっています。県内外の自治体と比べて高齢化の進行は緩やかな本町ですが、すでに「独居の時代」を迎えつつあります。
一般世帯総数に占める65歳以上単独世帯の割合
※「国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』(令和6年推計)」をもとに、三股町作成
○〝一つのヒント〟
独居高齢者は、65歳以上で1人暮らしの人と定義されています。この中には日常生活を難なくこなすことができる人、現役で働いている人や健康な人もいて「私は大丈夫」と考えている人もいるかもしれません。
しかし、今は家族と一緒に暮らしている人でも、将来的に1人で暮らすことになる可能性も否めません。いつか自分が当事者になったとき、どのように生きていくのか―。自分の周りに1人暮らしの高齢者がいる場合、どのように接していくべきなのか―。
その答えは人によって異なるものかもしれませんが、私たちの住むこのまちに〝一つのヒント〟がありました。
○民生委員・児童委員の活動に着目
今回は本町が迎えつつある独居の時代を乗り越えるため、私たちに何ができるのかを考えるにあたり「民生委員・児童委員」の活動に着目しました。
「民生委員・児童委員」は、担当地区の家庭を訪問し、高齢者や子育て世帯などからさまざまな相談を受け、必要に応じて行政機関や社会福祉協議会などの福祉団体につなぐ役割を担う非常勤の地方公務員です。本町には、現在43人の民生委員と3人の「主任児童委員」が活動しています。「民生委員・児童委員」(以下、民生委員と記す)は、その役割から「つなぎ役」と例えられることもあります。
■私たちだって、いつか1人になるかもしれない
独居の時代を乗り越えていくために、私たちに何ができるのでしょうか。
1人の元・民生委員と、1人の住民。2人の間の〝小さなつながり〟に学びます。
■1人の住民と、1人の元・民生委員。
ー2人の〝つながり〟に、そのヒントがー
3月まで民生委員として活動していた山下節子さんと、本町在住の今村花子さん。偶然の出会いの中に、私たちが手を取り合って「独居の時代」を乗り越えるための、ヒントが隠されています。
○「1人の住民」
今村花子(いまむらはなこ)さん
町内に住む今村花子さん(90)。昨年4月、鹿児島県から本町に引っ越してきました。今村さんは延岡市に生まれ、宮崎県や鹿児島県で民宿や美容院などを経営してきた元・経営者。夫は40年ほど前に脳梗塞で他界、2人の子どもは県外に住んでおり、現在は1人で暮らしています。
○「1人の元・民生委員」
山下節子(やましたせつこ)さん
3月まで民生委員として活動してきた山下節子さん(78)。平成27年から約9年間、その職を務めてきました。
「ひとり親家庭の相談を受けたり、行政に提出する証明書の作成をしたりと、さまざまな活動を行ってきました」と、民生委員としての活動を振り返ります。
○「調査」がきっかけで、出会った2人
今村さんと山下さんは、ある調査がきっかけで出会いました。
それは、災害時に単独で避難することが難しい人を、事前に把握するための「災害時要配慮者調査」です。これは、民生委員が担当地域の住宅を訪問して調査するもの。山下さんが今村さんの自宅を訪問したとき、そこにどんな人が住んでいるのか、全く知らなかったといいます。
ポストに入れた、連絡先を添えた置手紙。それを見た今村さんが「この地区にも民生委員さんがいて、こうやって回っておられるんだなぁ」と思い、山下さんに電話をかけたのがきっかけだったといいます。民生委員だった山下さんと出会った今村さんは、山下さんの存在をどのように感じているのでしょうか。次ページで、まずは今村さんの思いを探ります。
■偶然出会った、2人の女性。お互いの存在を、どのように捉えているのでしょうか。