健康 Medical Lecture 健康教室

~災害時に医療支援を行うチームJMAT(ジェイマット)~

1月13日、21時10分に鹿児島空港に到着した。日本医師会災害医療チーム(JMAT)の研修を東京で受けてきた帰りである。能登半島地震時に被災地に入った医師会の災害派遣チームからの報告とその経験を次の災害に生かそうと学んできたのだ。一緒に研修に行った鹿屋市の先生と「お疲れ様でした〜」と空港の到着口を歩いていた21時20分。「地震です!地震です!」携帯電話が騒ぎ、周りの乗客と顔を見合わせる。東日本大震災の時に仙台空港の天井板が落ちる場面が頭に浮かんだ。「やばい。すぐ出よう」階段を下りていた時に揺れた揺れた。危ない。しかしアメフト部の鹿屋市の先生とラグビー部の私は手を取り合って踏ん張れた。昔取ったきねづかは有効なのだ。鹿児島空港は震度4弱。日向灘を震源とする最大震度5弱の地震だった。車で指宿を目指すが高速道路も時速60キロメートル規制。夜だしどこで道が落ちているかも分からない。トラックのずいぶんと後ろを走り、トラックのテールライトが消えたら止まろうと決めていた。カーラジオで情報をしばらく聞いていたが、大きな被害の報告は無い。平川まで走り、月に照らされた錦江湾が見えてきた。「ん?」海面が低く感じた。津波警報は出ていないはずよな。23時前に家に帰り着いた。テレビをつけたら津波は既に宮崎に到達してるとのこと。不気味な海面はそのせいか。
南海トラフ巨大地震が今後30年以内に起こる確率は80パーセント。それは我々が生きている間に必ず起こると思いたくはないが備えるしかない。東海沖から九州東岸にかけての長いプレートが全割れか半割れするという。指宿市にも5メートルの津波到達が予想されている。そんなに高くはないかと思ったが4メートルを超える津波は大津波警報が発令されるのだ。国は、支援が主に向けられる重点受援県を定め、被災県の要請を待たずにプッシュ型の支援を行う。東海4割、近畿2割、四国3割、九州1割の比率で国から支援される。九州は少ない。それに重点受援県のうち、九州では大分県・宮崎県のみで鹿児島県は入っていない。驚いた。発災して3日たっても全国からは支援が届かないかもしれない。鹿児島県孤軍奮闘。そのつもりで備えよう。
備蓄品や非常時に持ち出す品を用意しよう。ホームページ「東京備蓄ナビ」では世帯員数やペットの有無に応じた備蓄品と量の目安が把握できる。使っていない収納ケースやクーラーボックスに名前を書き、その中にまとめておくと持ち出しやすいし自分の物だと判別しやすい。水が止まるとトイレは流せない。仮設トイレには人が集中して排せつ物が積み上がり劣悪な環境になる。携帯トイレを常備するなど我慢せずに排せつできるようにして飲食を控えることなく体調を良好に保とう。
救護に関与する全ての関係者は「CSCA ttt」を習熟してください。災害時の膨大かつ雑多な情報をこれにのっとって整理して上位に伝える。災害時は情報が最も大事になる。せっかく生き残った命。災害関連死を防ぐのが行政・医師会の究極の目標でもある。気合いを入れて「来るなら来い」。

■被災地における医師会活動(JMAT)CSCA ttt
◇Command and Control(指揮と連携) 
誰とどうやって、役割分担は?
指揮:
・上位本部は現地対策本部(保健所)
・連絡方法(携帯電話?不通時の代替手段は?)
・定時連絡の時間
・医師会内での役割分担の確認
・活動目標の明示と共有
連携:
・DMAT活動拠点本部(市役所?県庁?)
・県医師会の災害対策本部
担当者?連絡手段?連絡先?

◇Safety(安全)
危険情報は得たか?
被災地の安全に対する情報の集約(会員の安否確認)
予想される危険性の認識

◇Communication(情報伝達)
使用する機材は?無線チャンネルは?
通信手段の確保(携帯電話・衛星電話・EMISなど)
電話番号のコンタクトリスト作成(関係機関・上位本部)

◇Assessment(評価)
リーダーが必要とする情報は?必要な資源は?
情報管理:
・被災地内・避難所の医療情報や健康管理情報(感染)
・避難所の数、人数、救護所の立ち上げ、活動組織
資源管理:物品の過不足、どうやって確保する?

Triage(トリアージ)
Treatment(応急処置)
Transportation(搬送)

今月のドクター:指宿医師会 木之下 藤郎(きのしたふじろう)(鹿児島県災害医療コーディネーター)

問合せ:指宿医師会
【電話】34-2820