- 発行日 :
- 自治体名 : 鹿児島県指宿市
- 広報紙名 : 広報いぶすき 2025年8月号
新たな指宿市史では指宿市の「衣・食・住」についての記録も残します。民俗編執筆者の一人である牧島知子(まきしまともこ)氏(鹿児島民俗学会)と小牧地区で地域の高齢者から昭和中期ごろの郷土料理に関する聞き取り調査を行いました。今回はその一部を紹介します。
◆Q 名物「小牧そば」の歴史や特徴を教えてください。
▽A 小牧は台のように周囲の土地に比べて盛り上がっている平らな場所にあり、田んぼが少なかったので昔からそば作りが盛んでした。8月ごろに種をまけば10月末には収穫ができます。痩せた土地でもよく育つので昔から重宝されてきました。
収穫したそばは「メグイボ」という棒で実を落とし、石臼でひいてそば粉にします。おいしく食べてもらうためにつなぎとなる小麦粉は使わずそば粉だけで作るのが伝統です。今でいう十割そばですね。ゆでると麺が切れやすいですがそばの香りが各段に良いんです。
◆Q そばつゆの味付けを教えてください。
▽A そばのつゆは自家製のみそ・さば節で作ります。みそは昭和50年ごろまではどの家でも作っており、それぞれの家庭の味が受け継がれていました。
サバは指宿でもよく取れていました。瀬崎の人達が籠に魚を入れて売りに来るんです。それを三枚におろして、昔はいろりだったので、そこで燻してさば節にしていました。味付けはみそとさば節だけです。薬味で小ミカンの皮を刻んで添えます。
◆Q どんな時に食べていたんですか。
▽A 大みそかの夜(トシの晩)や八幡神社のホゼ祭り(秋祭り)の時に作っていました。ホゼ祭りは盛大で相撲大会や出店があり、他の地域からもたくさんの人が集まってきました。各家庭が新そばを振る舞い喜ばれたことから「小牧そば」として広がっていったんです。
◆Q 今でも作っているのですか。
▽A 小牧地区では10年ほど前から伝統の味を残そうと地域住民が協力してそばを育てています。毎年年末には手打ちそばを作り、だしをとり、みんなで味わうことで次の世代へつないでいきます。
小牧そばは一番のごちそうです。思い出の味で地域の宝物です。この歴史や味に誇りを持ち、大切に守っていきたいと思います。
今後指宿市史を編さんするにあたり、団体や個人への聞き取り調査を行っていきます。皆さんの心に残る習慣・習わし・思い出話についてぜひ聞かせてください。
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