- 発行日 :
- 自治体名 : 鹿児島県指宿市
- 広報紙名 : 広報いぶすき 2025年10月号
今年の6月、市内の熱い温泉が流れる水路に人が転落し、救急搬送(はんそう)をされ、懸命(けんめい)の治療が行われましたが、残念ながら大切な生命(いのち)が失われました。
まだこれからだという30歳代の若者でした。
■温泉は恵(めぐ)みばかりではなく
指宿は、古くから温泉の町として知られ、市民の生活と温泉が深い関わりを持ちながら発展してきた町です。温泉は観光産業にとっても大切な資源であり、農業をはじめ、他の産業にも多大(ただい)な恵(めぐ)みを与え続けてまいりました。
加えて、市内各所に浴場が点在(てんざい)し、地域を問わず多くの市民から利用されてきました。また、民間でも市営でも各家庭に温泉配湯(はいとう)が行われている地域もあり、「温泉」は、私達、指宿市民の生活には、切っても切り離せないぐらい必要な存在です。
しかし、一方では、今回の事故のように「温泉」による負の一面がある事も考えなければなりません。事故を契機(けいき)に、過去の出来事を可能な限り調査したところ、31年前にも同様の事故で尊(とうと)い人命が失われており、どうやらそれ以前にもあったとの伝聞(でんぶん)も耳にしました。大事に至らなくても子ども達や高齢者が、温泉が流れる河川や水路で火傷(やけど)を負ったという出来事は数々あったようです。
■スピード感を持って対応
私は、その日のうちにこの事故を知りました。詳しい状況を関係者を通じて集め、その日のうちに現場に立ちました。河川や水路を担当する職員も同様に現場を確認して、まずは応急措置をいたしました。
その後、ただちに市内における湧出(ゆうしゅつ)する泉源の分布や温度の高い水路の調査と、過去にあった温泉による事故等の調査を実施し、その結果に応じて、緊急に必要な転落防止対策を提案するよう指示いたしました。
1か月後には、今回の事故現場での転落防止柵(さく)の設置を済ませ、2か月以内に市内各地の温泉の流れる場所を全て把握し、その対策を決定いたしました。先の9月定例議会で、一連の調査結果を報告し、併せて安全対策にかかる費用を可決していただきました。
その内容は、今回の事故現場以外に、7か所の転落防止の対策を至急、実施することにいたしました。
■事故に学ぶ
今回の事故は、各放送局や地元紙によって報道をされ、多くの市民も知るところとなりました。改めて高温の温泉が流れている水路や河川が、指宿市内にあり、場合によっては重大な事故に繋(つな)がることを思い知らされました。
私達が学んだ事は、どこにその様な危険が潜(ひそ)んでいるかをきちんと見つけ出し、それを市民にしっかりとお知らせすること、そして多くの観光客が訪(おとず)れる町なので、外国人を含む訪(たず)ねて来られる方々にもわかる様にしておくことも大切です。
近いうちに、皆様にも熱湯の場所をわかり易(やす)くお伝えするようにいたします。
結びにあたり、今回の事故で大切な生命(いのち)を失った方のご冥福を心からお祈りし、ご遺族やご関係の皆様に謹(つつし)んでお悔みを申し上げます。
指宿市長 打越 あかし