くらし 霧島山と錦江湾の魅力再発見「霧島ジオパークの旅」vol.17

〜山で幸せ、海で幸せ〜
日本で最初の国立公園・霧島錦江湾国立公園がある霧島市。市内全域の自然や文化などは霧島ジオパークとして、日本ジオパークに認定されています。霧島山や錦江湾をはじめとする、魅力あふれるスポットを紹介します。

霧島温泉郷にある高さ23m、幅16mの華麗な丸尾滝。きりしまジオフレンドの田中裕一さんに、その魅力を聞きました。

■火山と温泉が織りなす丸尾滝
温泉水が流れ落ちる丸尾滝は、秋は紅葉の中で、冬は湯煙が立ち上る姿を楽しむことができます。

▽霧島温泉郷から霧島神宮方面へ向かう国道223号の旧道沿いに、丸尾滝はあります。滝に近づくと漂ってくる硫黄の香り。この滝は上流にある温泉の湯が混じって流れる湯の滝で、その成分により滝つぼは青白く見え、周りの岩の表面は温泉に含まれる鉄分が沈着して赤くなっています。さらによく見てみると、岩肌に沿って水が斜めに流れていることが分かります。これは、元々あった渓谷に溶岩が流れ込み、その傾斜がある地面から垂直に冷え固まったため、斜めに柱のような岩(柱状節理)ができたと考えられます。滝の上流には千畳敷と呼ばれる場所があり、滝をつくる柱状節理の断面を眺めることができますよ。
丸尾滝一つとっても、滝ができる前はどのような地形をしていたかが分かります。ちなみに、滝は水の浸食により少しずつ後退していきます。皆さんの周りに今ある景色が、昔はどんな大地だったのか、考えてみるのも面白いですね。

《スポット豆知識》
▽丸尾滝橋に隠された技術
丸尾滝にほど近い国道223号の丸尾滝橋。温泉地帯であるが故に、地面の下の温度は100度を超える所もあり、さらに物を溶かす酸性の強い土、地面から噴き出す温泉の蒸気、強力な火山性ガスが、橋の工事を難しくしました。それらの問題を解決すべく、国内で初めて橋の基礎の材料としてシラスコンクリートを採用し、一部工程を無人工事機械で行うなどさまざまな技術が用いられます。そして平成27年3月、無事故で丸尾滝橋は開通したのです。

◆隠された五つの技術
(1)熱、蒸気、火山性ガスに強い火山生まれのシラスコンクリート
(2)柱をさらに強力に保護する、酸に負けない壁
(3)熱さから作業する人を守る、温度を下げる水の管
(4)特殊な液体を注入した科学のバリアーで、ガス、蒸気を遮断
(5)危険エリアでは無人工事機械が大活躍