- 発行日 :
- 自治体名 : 鹿児島県屋久島町
- 広報紙名 : 町報やくしま 2025年2月号
■まちの健康づくり計画「健康やくしま21」
町では、「自然と共に生きる元気なまち」の実現を目指し、令和11年度までを計画期間とする「健康やくしま21(第3次屋久島町健康づくり計画)」を策定して、さまざまな健康づくりの取り組みを進めています。今年度は、「がん対策」と「こころの健康」について考える取り組みを実施しています。
今月号では、町の相談事業のカウンセラーを務めている佐藤佳志子さんに、「こころと体の健康」をテーマに寄稿いただきました。
▽佐藤佳志子(さとうかしこ)さん
公認心理士・心理相談員・スクールカウンセラー・産業カウンセラー。屋久島町内では、スクールカウンセラーや、「ルピナス相談室」のカウンセラーとして活動されています。
今は昔と比べて、学校へ行けない子や、行ってはいるけれど、学校や教室で自分らしく過ごすことが難しくストレスを感じている子も少なくありません。それ以外にも、様々な問題行動や、身体の症状(頭痛、腹痛、下痢、低血圧、息苦しさ等々)として表れる子もいます。原因は様々なことが絡み合っており、千差万別ですが、このような子の中に共通して起きていると考えられることがあります。それは、「自律神経の混乱」です。
皆さんもご存じのように、自律神経は交感神経と副交感神経の二つの神経から成り立っていますが、実は副交感神経はさらに二つのルート(腹側迷走神経と背側迷走神経)に別れて機能していることがわかってきています。
今回は、神経セラピストの浅井咲子氏の提案による、わかりやすいネーミングでお伝えしていこうと思います。
本紙図に示されているように、安定した神経の状態というのは、一番下の「なかよし神経」や「ホットケーキ神経」がベースとして常に働いているのが理想的です。土台となる神経がしっかりと働くことで、安心して活動したり、人とコミュニケーションを取ったり、何かにチャレンジして頑張ることができるのです。ところが、前述したような子は、一番上の「こおりの神経」が働いていることが多いのです。「ライオン・ウサギの神経」が優位になれば、危険を回避するために反抗したり、暴れたり、逃げ出したりすることができます。しかし、それもできず危険な場所に居続けざるを得ない時に働くのが、「こおりの神経」で、最も緊張度の高い神経です。
緊張感から、様々な身体症状が引き起こされます。中には、意識を飛ばしてしまう子もいます。授業中、ぼーっとしていたり、眠り込んでしまったりといった状態、あるいは、自分がしたことなのに覚えていないと訴えるときなども、「こおりの神経」の働きによることが珍しくありません。
何故このような事が起きるのかについては、一人ひとりの状態や育ちのプロセスを見ていく必要がありますが、ここで言えるのは、身体や、神経の働きを無視して、何かを強要することはできないということです。
そのうち良くなるだろうと問題を先送りしたり、「気持ちの問題だ、頑張れ」と言い放つことは簡単ですが、身体に起きていることに向き合うことなく先へ進むことはできません。少しでも症状を軽くするためには「安心で安全な環境」を用意することが一番大切です。
「こおりの神経」は背中に集中しており、安心・安全が得られないとき、文字通り「背筋が凍る」ような感覚でいるに違いありません。そっと背中(特に腎臓の辺り)に手を当ててあげる事は有効だとされています。また、あたたかいまなざし、微笑み、共感の言葉は、どんな時も安心をもたらすことでしょう。
子どもたちのみならず、お互いに笑顔で安心と安全を伝え合える社会にしていきたいですね。