- 発行日 :
- 自治体名 : 鹿児島県徳之島町
- 広報紙名 : 広報徳之島 令和7年9月号
■島のお盆や正月の風習から~なぜ?砂を撒くのか~
○亀津地区のお盆
徳之島町亀津地区のお盆の風物詩として、親族や親戚が料理や飲み物を手に集まり、墓前で飲食を共にする送り盆の習俗が挙げられます。その様子は毎年のように地元紙に掲載され、群島内でも特徴のある行事として紹介されています。
沖縄の旧暦3月に行われる祖先供養の行事シーミー(清明祭)で、親族一同が先祖の墓に集まり飲食を共にする風習と似ているのですが、お盆には行わない点が異なります。島で石塔を立てて人を祭るようになった明治以降と推測されますが、いつ頃から始まったか定かではありません。
かつては、琉球石灰岩の墓石を取り囲むように白い砂が敷かれる墓地が広がっていたものの、近年は本土風の御影石で覆われた墓地が増え、雰囲気も大分変わってきました。
○砂は飾り?効果があるの?
海岸で採取した白い砂を庭や墓地に撒くという風習は、正月前にも見られた風景であり、神事で塩を撒くのと同様に清めるという意味があるそうです。それ以外に何らかの効果は無いのか気になっていました。すると、ある日「きっかけは『ゲーム機が壊れた』ヒアリを寄せつけない砂、小4が開発」という新聞の見出しが目に留まりました。
公園で遊んでいたらゲーム機が壊れ、本体の隙間からアリが入り込んだことが原因だと分かった小学生は、専門家の助言を求めながら開発した光触媒と砂を混ぜた物質を土に撒く実験を繰り返し、アリが寄り付かなくなる効果を確認。企業などと共同で特許も出願中で、数年以内の実用化を目指しているとのこと。
この光触媒と混ぜる砂は、「アリが嫌う石灰と同じ炭酸カルシウムでできたサンゴ砂」という記述を読み、「なる程」と思った次第です。
つまり、島はサンゴ礁で囲まれていることから砂は石灰岩由来であり、美しさや清さを求めてわざわざ海岸から運んできた砂には、アリを寄せつけない効果があるという事です。砂を敷く前と後での違いに気付き、このような風習が連綿と続いてきたのではないかと思うと、先人の知恵を実感せざるを得ません。
(郷土資料館長 遠藤 智)
問合せ:郷土資料館
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