文化 壺屋焼物博物館

■焼締徳利(やきしめとっくり)~小さな徳利から読み取れる大きな時代の流れ~
1926年頃に制作されたこの徳利の胴部には「首里無盡(むじん)/株式会社」「開業紀年」の文字が彫られ、「山口」と読める印が押されています。
首里無盡株式会社は、1926年に実業家の山口全則(やまぐちぜんそく)によって創立された金融機関で、「山口」印があることから発注者は山口氏本人と推測され、1920年代には、山口氏が壺屋陶工と関係を持っていたことが伺われます。山口氏は、民藝運動の祖である柳宗悦(やなぎむねよし)の1939年の来沖に際し、柳氏に赤絵の皿を寄贈しました。その様子を雑誌『工藝』95号(1939年)の中で柳氏は「何なりと持ち帰るようにとて、私が選ぶままに寄贈されたのである」と書き残しています。また、山口氏は、日本民藝館に紅型衣装も寄贈しており、氏が戦前・終戦直後の民藝運動来沖の際のキーパーソンであったことをこの徳利は示しています。

臨時休館中3月31日まで