その他 やえせの昔話(3)

■鴨とりウスメー
字伊覇 出身
話者:明治44年生 男性

これは明治の初期の話だったと私は思っているんだけどね。鴨とりウスメー(おじいさん)という人がいらっしゃったそうだ。この人はね、佐敷の海で鴨を捕りに行こうと、大変じょうぶな綱を作って持っていったそうだ。
佐敷あたりの海に着くと、お爺さんは鴨に気づかれないようにゆっくりと泳いでいった。鴨を一匹捕まえると、おじいさんは頑丈な縄で鴨の足をくくり、着物の帯に結びつけた。そんなふうにして、鴨を捕まえては、帯にどんどんくくりつけていった。
浜辺に着くと、何かの拍子でおじいさんが転んでしまったんだろうね。帯にくくりつけた鴨の一匹が驚いて飛び上がった。すると他の鴨もみんな揃ってぱたぱたと飛び始めたものだから、お爺さんは着物の帯ごと鴨に引き上げられて、ふっ飛ばされた。そのまま一緒に飛んでいたら、もう真夜中になっていたそうだ。佐敷から稲福(旧大里村字大城の集落)のあたりを鴨と一緒に飛んでいるお爺さんがいようとは誰も気づかない。おじいさんがどんなに「稲福ヘーーイーー」と空から叫んでも、誰も起きない。
その後はね、山の松の木かなにかに引っ掛かって「ああ助かった。よかった」とおじいさんは言ってね。片手で強く木をつかみながら「なー、でーじやくとぅん(もう大変だから)」と言って、一つ一つ鴨の足にくくりつけた縄を外して、なんとか木から降りて家に帰っていった。
それからは鴨とりをやめてしまったそうだが、おじいさんは皆から鴨とりウスメーという名前をつけられたそうだよ。

今回、掲載した昔話は昭和57年~59年に八重瀬町内各字の皆様のご協力を得て収集した昔話の内の一話です。令和5年度より「八重瀬町伝承話資料保存継承事業」が始まり、この事業の一環で話者のご家族にその当時収集した昔話について、使用許諾を得られた話を紹介しています。
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