- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道伊達市
- 広報紙名 : 広報だて 2025年4月号
◆あれから25年
NPO法人環境防災総合政策研究機構
理事 宇井 忠英
25年前の3月31日、有珠山で23年ぶりに噴火が始まりました。
事前避難が行われたため死傷者を出さずに済んだこの噴火から25年経過した今、次の噴火にどう備えるか、噴火が始まったらどう対応するか、検討が迫られています。
▽備えの第一歩は情報収集
有珠山の噴火にどう備えるかは、皆さんが住んでいる場所や通勤・通学・通院先などにより異なります。
まず、避難が必要かを知るために、配布されている「有珠山火山防災マップ」の火砕流や火砕サージ・噴石などの危険区域がどこかを確かめてみましょう。
ハザードマップは市ホームページや市公式LINEから確認できるほか、市役所2階の危機管理課や防災センター3階の展示室で入手できます。
・市ホームページで公開中
※市公式LINEからも確認できます
▽火砕流・火砕サージに巻き込まれると命を落とす
噴火が始まっても火砕流・火砕サージの危険区域から避難せずに居ると命を落とす可能性が大きいのです。江戸時代以降9回発生した噴火のうち、少なくとも3回は噴火開始から1~2週間以内に火砕流が発生して犠牲者が出ました。
九州の雲仙普賢岳では、平成3年に火砕サージで43名の犠牲者が出ています。
▽降灰に巻き込まれても命は落とさない
降灰とは噴火の際に上空に吹き上げられた砂粒や小麦粉サイズの細かな噴出物が風に流されて降ってくる現象です。ハザードマップでは市内全域で降灰の可能性があると表示されています。降灰に巻き込まれると火山灰を吸い込んで肺を痛めたり、眼に入って角膜が傷ついたりしてしまいます。降灰で避難する必要はありません。しかし、外出を必要最小限に留めることをお勧めします。そして普段からマスクとゴーグルを常備しておきましょう。
火山灰が積もった道路では車のブレーキが利きにくくなります。降灰中には視界不良になって車の運転が困難になります。電子機器の内部に細かな火山灰粒子が侵入して誤動作を引き起こすことがあります。送電線がショートして停電することがあります。
▽噴石に襲われるリスク
噴火が始まり火口が新しくできるときや拡大するとき、火山体を作っている岩の破片が火口から周囲に放出されます。こうして落ちてきた岩を噴石といいます。
直撃を受けると死んでしまいます。御嶽山で平成26年に噴火が始まったとき、噴石による死傷者が多数出ました。
有珠山で山頂噴火が発生した際に噴石が飛来する可能性がある範囲内には観光施設があるだけで住宅はありません。東山腹から山麓にかけての場所で噴火が始まると、上長和地区の一部に飛来する可能性があります。
▽降雨型泥流(土石流)
集中豪雨に見舞われると土砂を含んだ濁流が川からあふれ出して土石流災害が起こります。火山の噴火が原因で同様の災害を引き起こすのが降雨型泥流です。火山の山腹に積もった噴出物が大雨の雨水と共に一気に流れ出して発生するのです。噴火が収まった後でも発生することがあり、ハザードマップに示された降雨型泥流の危険範囲からは避難が必要です。
▽農業・漁業の被害
田畑や漁港、定置網の設置場所が避難指示区域に指定されてしまうと立ち入ることができなくなります。そうなると、田畑や漁場での作業ができず収入を失ってしまいます。行政による支援には限りがあるので、こうした事態に陥ったらどう対応するのか事前に考えておく必要があります。
避難指示区域外でも降灰による被害が発生します。農作物の生育期に火山灰を被ると枯れてしまい出荷不能になります。火山灰を被った牧草を家畜に与え続けると骨の病気を発生することがあります。
▽噴火の前兆検出から避難開始まで
日本の主要な活火山では気象庁などにより前回の噴火以降に多様な観測設備が増設され、異常を検出して噴火警報を発信する体制が整い始めました。
特に有珠山の場合は警報が発表されずに突然噴火が始まってしまうことはないでしょう。ただ、2000年噴火のように異常を検出してから噴火開始まで4日の余裕があるとは限りません。過去には32時間という事態もありましたので、避難先に持って行くもの、通勤・通学・通院先への移動経路など、どう対応するかを日頃から考えておくことが肝心です。
・今月号に挟み込んでいますので、ぜひご確認ください
▽多様で長期化する噴火
噴火現象は開始から終息まで多様な現象が多様な規模で起こり、事前にそれを把握することは不可能です。市内では前回は比較的早期に避難指示が解除され、住宅やインフラの被害は限定的でした。しかし次回も同じとはいえず、長期間の避難が必要になるかもしれません。
▽フェイクニュース
前回の噴火当時と比べると、SNSで不特定多数の人々に情報を手軽に出せるようになりました。にせ情報を発信して災害の当事者を不安に陥れるフェイクニュースもあります。
熊本地震や能登半島地震の際にも起こりました。有珠山の次期噴火でもフェイクニュースが拡散するでしょう。噴火対応に当たる行政組織や観測者・研究者が定例記者会見を繰り返して、避難者が必要とする情報を流すことが必要です。
避難の当事者はその情報を受け止め、根拠が確かでない噂話を拡散しない心構えが欠かせません。
対策:市公式LINEの登録がおすすめです
▽避難先を確認しましょう
避難バスは「高齢者等避難」が発令されてから、おおよそ1時間後に集合場所に向かいますので、バスを利用される方は集合場所で待機してください。避難所やバスに乗車するための集合場所は、市ホームページで確認できます。
噴火による避難は長期化して、いつ解除になるか、なかなか見通しがつきません。住居が損傷して帰宅不能になるケースもあります。
避難所の生活環境は年々改善される傾向が見られるものの、健康を損ねるリスクを抱えています。こうした状況なので指定避難所には行かず有珠山周辺から離れた親族などに頼るという選択肢も検討しておくとよいでしょう。
▽より良い噴火対応に向けた課題
次期噴火に際して、より良い避難体制が取れるように市で検討が進められています。避難指示対象地区を具体的にどこにするか、要支援者の避難、ペット同伴可能避難所の設置、避難所の環境改善、道内外からの支援の受入態勢の構築、仮設住宅や仮設校舎の建設など課題が順次改善されることを筆者は願っています。
問合せ:危機管理課危機管理係(市役所2階)
【電話】82-3162