文化 感動の場―点

■『裸婦と犬』1972年小川原脩画
明るく青い空にぽっかり浮かぶ雲。空の下には横たわる裸婦と口をあんぐり開けた犬が描かれています。この作品は1972年に東京日本橋柳屋画廊と札幌時計台文化会館での個展に出品された『裸婦と犬』の連作のうちの1点です。
地面に横たわる裸婦の身体は連なる山のようにおおらかで、犬との大胆な組み合わせでありながらも雲と地面が同じ色調で表現されているため、自然な背景として捉えることができます。画面をよく見ると、犬の足の周辺や裸婦の身体にうっすらと下描きの線が残っています。小川原が最初に描こうとした犬なのでしょうか。制作する過程で構図を考えながら完成に至った経緯を読み取ることができます。
北海道の爽やかな夏を感じさせる情景ですが、犬の口からはダラリと赤い舌が出ています。気象庁のデータではこの作品が描かれた1972(昭和47)年に比べると、昨年7月の倶知安の平均気温は1.5度も上昇しています。夏日が増えた近年「こう暑くてはたまらない!」と言いたそうな表情にも見えてきます。

文:金澤逸子(小川原脩記念美術館学芸スタッフ)