文化 特集 受け継がれる文化と伝統(2)

■羊蹄太鼓
倶知安町指定文化財第3号(無形民俗文化財)
1997(平成9)年11月1日指定

▽羊蹄太鼓について
羊蹄太鼓は、『太鼓のロクさん』こと高田緑郎さんが1963年に羊蹄山に感謝の気持ちを込め、羊蹄山を登る人たちや山の険しさなどを太鼓で表現した和太鼓の曲です。
今日まで繰り返し演奏されるうちに、子どもから大人まで親しまれ、「ふるさとの曲」として演奏されるようになりました。

▽太鼓のロクさんについて
羊蹄太鼓の作曲者であり奏者でもある、高田緑郎さんは学校や施設、イベントなどさまざまな場所で演奏活動を行い、地域の人々から親しみを込めて『太鼓のロクさん』と呼ばれていました。
ロクさんの言葉に「声を出して楽しく打つ、それがロクさんの太鼓なんだよ」という言葉があります。羊蹄太鼓では誰もが楽しく演奏できるように、楽譜には音符を使わず、右手と左手の打ち方をカタカナで表現しています。

▽受け継がれる羊蹄太鼓
現在、羊蹄太鼓保存会には幅広い年齢やさまざまな国籍の約50名が所属しています。保存会の中には『鼓流(こりゅう)』・『鼓流Jr.』・『和鼓心(わごころ)』・『北陽小学校羊蹄太鼓少年団』の4つの団体があり、それぞれが活発に活動をしています。
ロクさんが亡くなって15年経った今でも羊蹄太鼓は保存会を中心に受け継がれ、ロクさんを知らない子どもたちにもロクさんの教えや思いが伝えられ、演奏され続けています。
毎年、8月上旬に行われるくっちゃんじゃが祭りや10月に行われる鼓魂東西というイベントで羊蹄太鼓の演奏を見ることができます。

■天瑞山大佛寺本堂の天井画
倶知安町指定文化財第1号(有形民俗文化財)
1971(昭和46)年3月30日指定

▽大佛寺天井画について
この天井画は、大佛寺の初代住職・斉藤忍随によって描かれました。多くの画家の画風を参考にしながら独学で描かれた天井画は178点あり、山水や花鳥、観音、肖像など墨絵や彩色画の幅広い表現方法を用いています。
天井の中央には、直径2.9mにもなる円の中に迫力のある筆使いで、竜に座り修行をする僧侶の絵が描かれています。

▽大佛寺天井画の特徴
建物の老朽化に伴い、1994年に行われた本堂の全面改修では、全ての絵が取り外されました。それまで、1914年ごろから描かれた絵の完成月日は不明でしたが、取り外した絵の裏に記載が残っており、1918年7月9日に完成したことが判明しました。また、ほかの絵と異なり「二宮金次郎の絵」には、2枚の絵が張り合わされており、1枚目はまきを背負い書物を読んでいる姿、2枚目はまきに座り書物を読んでいる姿を描いた未完成のものも発見されました。

▽斉藤忍随について
秋田県出身の斉藤忍随は曹洞宗永平寺で仏道を修めており、1897年に北海道に渡り、泊村の漁場を取りまとめていた工藤長作の家に滞在していました。後に描く天井画の材料となったシナ材のほとんどは工藤長作からの寄贈を受けたものです。
1899年に倶知安町を訪れた斉藤は、字峠下に約8坪の小屋を建て、布教を行いました。その後、町内で数回の移転を経て、1903年に現在の大佛寺がある場所に説教所を設け、1915年に大佛寺が建立されました。

文化財は地域で培われてきた文化遺産であり、その土地の人たちによって守られてきた地域ならではの資源です。歴史を理解する中でとても大切なものであるため、私たち町民はこの長い間守られてきた町の伝統を未来にしっかりと残し、語り継いでいくことが大切です。