くらし 地下の研究現場から第60回-地下水の流れやすさは深さで違う!

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センター
モグ太くん:「モグ太」です。今回は、地下施設で行っている「地下水の流れやすさ」について紹介します。
地面の中には、古くからある水が閉じ込められていたり、降った雨が地面に浸み込んだりするために水を含んでいる場所があります。この水は、地下水と呼ばれていますが、この地下水は岩盤の亀裂や隙間の中をゆっくりと流れる場合があります。第54回では地下の割れ目の水の流れやすさの法則性についてご紹介しましたが、今回は、もう少し具体的に幌延の地下水の流れやすさが深さによってどのように変わるのか、なぜそのようになっているのかを紹介します。
まず、どのようにすれば水の流れやすさを調べることができるでしょうか?身近な事例で考えてみたいと思います。花や植木に水をあげるときにジョウロをよく使うと思います。水やりを始めてすぐはたくさん水が出てきますが、ジョウロの中の水が徐々に減っていく(水位が下がっていく)とともに水が出る量も徐々に少なくなります。そして、早く水を出したい時に穴の多い蓮口(はすぐち)を使った場合には中の水位は早く下がり、逆に穴の少ない蓮口を使ってゆっくり水を出す場合には中の水位はゆっくりと下がります(図1)。このようにジョウロの場合、水の出てくる量や水の出やすさはジョウロの中の水位変化と関連していますが、岩盤の中にある地下水に関してもこれと同じようなことが起こります。
幌延深地層研究センター(以下「センター」という。)では、坑道の掘削前から坑道周辺の地下水位の変化を、坑道の掘削を開始してからは地下の坑道に湧き出てくる地下水の量の計測を続けています。ここで、坑道に湧き出てくる水の量を先ほどのたとえ話のジョウロから出てくる水の量に、地下水の水位をジョウロの中の水位に置き換えて考えると、坑道内に出てくる水の量や水位の変化から岩盤が水を流しやすいかそれとも流しにくいのかを評価することができます。
図2は、坑内に湧き出てくる地下水の量と、坑道から約100m離れた場所に掘った観測井戸の水位の変化を解析して、幌延の周辺の地下の水の流れやすさを計算した例です。この例では、観測井戸で測定した水位変化の観測結果を、地下坑道が深度250mに到達してからの約15年分のデータを解析しました。センターの地下の様子を簡略化した場合、これまでの調査結果から4つの特徴のある領域に分類できることが解っています(図2左)。この4つの領域の岩盤の水の流れやすさを様々な値に想定したときに、観測井戸の地下水の水位の変化と坑道内から湧き出てくる地下水の量がどのようになるのかを計算しました。そして、その計算結果を観測結果と比較する(図2中)ことでセンター周辺の地下水の流れやすさ(図2右)を調べました。
センター周辺の地下深くでは岩盤中の地下水は深くなるにつれ徐々に流れにくくなり、特に深度400m付近を境に急激に流れにくくなっていることが解りました(図2右)。では、なぜこのように地下深くになると水が流れにくくなるのでしょうか?
地下水は、岩盤の中を流れるとき岩盤の割れ目や隙間を流れます。地下深くでは、岩盤は周りの岩盤に押されて強い力が掛かっています。この力により岩盤が圧縮されて地下水が流れることができる隙間が狭くなることで、地下深くになるにつれて徐々に地下水は流れにくくなります(図3左)。
また、これまで実施してきた別の調査から、センター周辺では岩盤の割れ目の中の水の流れ方が深度約400m付近を境に、隙間の中を自由に移動できる流れ方からパイプ状の流れ方に変化することが解っています(図3中・左)。地下水が隙間を自由に移動できる場合は、地下水の流れを遮る場所があったとしてもその場所を迂回することができるため、水の流れは堰き止められることはありません(図3中)。一方で、流れ方がパイプ状の場合は、どこか一カ所でも詰まってしまうと水の流れの行き場がなくなり堰き止められてしまいます(図3右)。深度400m付近で急激に地下水が流れにくくなっているのは、この効果で説明することができます。
このように幌延の地下では、岩盤の隙間が狭くなる効果と地下水の流れ方が変化する効果で地下深くになるにつれて地下水が流れにくくなっていることが解りました。

写真は本紙をご覧ください。

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