子育て 【特集】見えない思いに想いをよせて(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 青森県むつ市
- 広報紙名 : 広報むつ 令和7年11月号
表紙の絵は、当時小学校6年生だった児童が描いた絵です。
長く学校を休んでいた彼は、久しぶりに登校したある日、校舎の下駄箱に入っていた真新しい自分の上履きを見て、こう漏らしました。
「お母さんに買ってもらった上履き。何回も履かないままサイズが小さくなりました。僕は悪い子です。」
ぽつりとつぶやいたこの言葉には、彼の中にある罪悪感や自己否定の感情がにじみ出ています。
一見すると楽しそうな絵の中にいる彼のお話です。
学校に行くこと。
学校に行かないこと。
どちらもこどもたちの大切な思い、悩んで決めた大切な選択です。
■不登校児童生徒が増加しています
◇令和6年度の傾向と背景要因
不登校となる要因は様々です。進級や進学などの環境の変化に適応できなかったり、スマートフォンやゲーム利用の増加による生活リズムの不調が影響していると考えられます。
また、友人関係や学業への不安、家庭内の関係性の悩みなど、複数の要因が重なっているケースも見られます。
いわゆる不登校は「怠け」「問題行動」ではなく、こどもたちの成長過程における一つの意思の表れです。
グラフのように一人ひとりが抱える課題が異なり、悩んでいることがうかがえます。
◇不登校の主な要因

市における不登校児童生徒数は年々増加傾向にあり、令和6年度末の集計では161名に達しています。特に小学校において、新規の不登校児童が増加している状況です。一方、中学校では新規の不登校生徒数は抑制されているものの、依然として継続的な支援が求められています。今後も、児童生徒一人ひとりの状況に応じた不登校支援の充実と推進が必要です。
義務教育を支える学校は、集団での生活を前提としていることから、一人ひとりに適した多様な学びの場の確保が必要となっています。

グラフ上段:中学生 下段:小学生
■こども一人ひとりを大切にする居場所
▼こどもたち一人ひとり
◇メタバース教育支援センター
今年度9月から「むつっこメタバース」をスタートしました。学校やセンターに足が向かない児童生徒が複数名参加し、オンライン授業やメタバース校舎での活動を行なっています。
専用のAIドリルを活用しての学習や、前の学年の授業を復習したり、自分のペースで学ぶことが可能です。
朝のオンライン体育やホームルーム活動は、参加児童生徒の生活リズムを整える良いきっかけとなっています。
※詳しくは本紙掲載の二次元コードからご覧ください。
◇学びの多様化学校
誰ひとり取り残されない学びの保障に向けて設置する学校です。特別な教育課程を編成して教育を実施する事ができます。6ページで詳しくご紹介します。
◇教育支援センターお引越しのお知らせ
現在の教育支援センターは築50年を経過し、施設の老朽化が進んでいます。児童生徒が安心して安全に過ごせる、さらに居心地の良い環境の中で、より充実した支援を提供するため、旧田名部カトリック幼稚園への移転を決定しました。移転時期につきましては、改修工事完了後となる令和8年度の秋頃を予定しています。
◇教育支援センター
学校の外で学びや活動を行ない、エネルギーを蓄えるための安心できる居場所です。昨年度より固定的な時間割を廃止し、通室生一人ひとりに寄り添った支援ができるよう、柔軟なデイプログラムを採用しています。今年度は、エネルギーが貯まった通室生が再登校する「チャレンジ登校」に複数のこどもたちが取り組んでいます。
また、教育相談を随時行なっており、専門の教育相談員が、不安や悩みを抱える児童生徒とその保護者、先生方に寄り添って学校生活や子育て、教育等に関する相談に親身になって対応します。
◇むつ☆かつ
これまで学校の中で行なっていた部活動を、地域が運営するクラブ活動として行なえるようにした取り組みです。
◇校内教育支援センター
学校の中の「もう一つの居場所」として全ての学校に設置されています。登校はできるものの教室には入りづらいこどもたちが、ここでの活動を通じてエネルギーを蓄えたり、集団生活に疲れた気持ちを落ち着けたりする場として活用されています。これまで、第二田名部小学校・田名部中学校・大平中学校において校内教育支援センターの環境整備を進めてきました。令和8年度以降、他校においても順次環境整備を進める予定です。
◇学校
義務教育の基礎となる学びの場。集団生活の中で、一人ひとりの良さや可能性を認め合い、児童生徒それぞれにとって力を伸ばせるよう魅力ある学校づくりを目指しています。
市では、むつっこメタバースや、学びの多様化学校の設置など、多様な「学びの場」づくりに取り組むと同時に、むつ市教育支援センターがハブとなり、一人ひとりの成長に寄り添った支援を行なうことで、こどもたちが自分に合った学びの場を選択できるよう支援しています。
令和5年4月にスタートした「むつ☆かつ」も、こどもたちの新しい居場所となっています。本年度は、すべての中学校部活動がむつ☆かつに移行し、文化クラブ、スポーツクラブあわせて23クラブが活動しています。
むつ☆かつでは、従来の種目に加え新たな分野も導入し、不登校や少人数校のこどもたちも自分の意志で参加できる場となっています。活動を通じて居場所を見つけ、他校の仲間と交流しながら自分の「好き」や「得意」を伸ばすことができる、多様な学びの場の一つです。
