- 発行日 :
- 自治体名 : 宮城県仙台市
- 広報紙名 : 仙台市政だより 2025年8月号
東日本大震災を語り継ぐため市民図書館に設けた「3・11震災文庫」。所蔵する約1万冊から、よりすぐりの本をご紹介します。
◆本屋のある日常の尊さと、震災を知らない君たちへ
一般社団法人みやぎ連携復興センター理事、郷土史研究家 千葉 富士男
◇「復興の書店」
稲泉連/著 小学館 刊
震災の夜、満天の星が降り注ぐ夜も、ラジオの声に慄(おのの)き新聞を貪(むさぼ)り読み悲しみ、テレビ報道で絶望した夜も、癒やしを求めたのは本であり書物だった。震災直後、最初に書店で買った本の紙の手触りとインクの匂いの記憶は今もほろ苦く胸を締め付ける。
「復興の書店」は、東日本大震災で被災した書店の復興と再生に挑む書店経営者と書店員の奮闘を丁寧に取材した記録である。
地震津波と放射能に襲われる極限状態の被災地・東北の小さな書店に関わる人と人の非日常を描いた「復興の書店」は、ネットでポチって買う行為が街の本屋さんをなくす所業なのだと、私たちに強烈に問い掛けている。
◇「きみは『3・11』をしっていますか? 東日本大震災から10年後の物語」
細野不二彦・平塚真一郎・井出明/著 小学館 刊
私は榴岡図書館でこども向けの本を手に取った。そこには東日本大震災をまたいだ人々の記録がつづられていた。
第1章は石ノ森萬画(まんが)館で1人残った業務課長が38人の被災者を5日間守った漫画で、第2章は石巻市の大川小学校で娘を亡くした教員の10年間が続き、第3章では被災地の41人の震災後10年間の声がつづられていた。
読後感は「日常の尊さ」を日常でどう感じるかとの問いや、誰でもが直面するであろう「惨禍(さんか)」に対して、真摯(しんし)に生き抜く術(すべ)とは何か?との問いが続く。
実は大人向けの没入読書とも言えるが、読んだ大人がこどもに薦める一冊とも言える。
紹介した本は、市民図書館でご覧いただけます
問合せ:市民図書館
【電話】261・1585