- 発行日 :
- 自治体名 : 宮城県角田市
- 広報紙名 : 広報かくだ 令和7年8月号
Q.万博の隕石(いんせき)は火星から来たってなぜ分かるの?
A.石の中の空気が火星の空気と同じだから
1970年の大阪万博では、アポロ宇宙船が月から持って帰った「月の石」(アメリカ館)が大人気でした。今年の大阪・関西万博では、日本観測隊が南極で発見した隕石「火星の石」が日本館で展示されていて、話題になっています。もしも、海に落ちていたら絶対に見つからなかったでしょうね。重さは13kg、ラグビーボールほどの大きさで、火星由来の隕石としては世界最大級だそうです。では、この隕石はなぜ火星から来たとわかったのでしょうか?
◆理由その1 鉱物の組成
顕微鏡で観察した結果、地球の石と同じように、形のそろった鉱物組織がありました。これは、火山の根元にあるマグマだまりに降り積もって固められた状態だとわかりました。この隕石は、火山活動があって、ある程度の重力がある星から来た、ということがわかります。
◆理由その2 隕石の年齢
分析によって、岩石として生まれたのは13億年前だとわかりました。つまり、この隕石の出身地は、太陽系ができた46億年前から少なくとも13億年前までは火山活動が続いていたということがわかります。小惑星などではなく、ある程度の大きさの天体だと考えられます。ということは、火星?金星?
◆理由その3 内部に閉じ込められた空気
決定的なのは中に閉じ込められた空気でした。火星にはバイキングという探査機(1976年)をアメリカが送り込んで、火星大気の分析を行っています。この隕石には、できた当時の空気が中に閉じ込められていて、その組成が火星大気の成分とほぼ一致しました。これで決定ですね。
他の火星の隕石も併せて調査すると、約1000~1300万年前に火星で何かが起こって火星から飛び出してきた隕石がいくつかありました。そして、隕石は1000万年以上の時間をかけてだんだんと地球に近づき、数万年前に地球の大気圏に突入しました。それが今、我々が目にする火星の隕石なのです。我々の祖先が2本足で歩き始めたのが700万年前、それよりもはるかに長い年を旅して、今、この隕石は我々の目の前にあるのです。
JAXA角田宇宙センター 吉田誠
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