- 発行日 :
- 自治体名 : 宮城県多賀城市
- 広報紙名 : 広報多賀城 令和7年10月号
■収蔵庫の宝物 職員のイチオシ資料紹介
□涅槃(ねはん)図
かつて、現在の桜木南区・東区にあった沖区という地区で拝まれていた涅槃(ねはん)図ずです。江戸時代末期、安政2年(1855)にここの16人の女性たちが共同でお金を出し合って手に入れたもので、作者は水戸の龍道梅雪という絵師です。
涅槃図とは釈迦(しゃか)が入滅した際の情景を描いたもので、亡くなった釈迦の周りで弟子や関係する人々、動物たちがその死を悼む構図となっています。
この涅槃図があった沖区は、中谷地、原、宮内という3つの集落で成り立っていました。アジア・太平洋戦争時、一帯に海軍直属の軍需工場である多賀城海軍工廠が建設されることになったため、昭和17年から家々の移転が始まり、集落は消滅しました。
しかし昭和30年代に、沖区から下馬に移った家にこの涅槃図があることがわかり、これをきっかけに16人の女性の子孫で御釈迦講が結成されました。毎年2月15日にこの見事な涅槃図を拝み、移転によって各地に散らばったかつての近隣住民たちと故郷を懐かしみ、楽しい時間を過ごしたようです。平成24年頃に御釈迦講は解散してしまいましたが、色鮮やかな涅槃図は戦争とそれに翻弄された人々の歴史を今に伝えています。
※紹介した資料は、10月4日(土)から12月21日(日)まで、埋蔵文化財調査センター展示室で開催する企画展「宮城に生きる民俗多賀城海軍工廠と地域の変化」に展示しています。
問合せ:埋蔵文化財調査センター
【電話】368-0134